宇海くんはこの日、荷造りのために外出せず、私と会うなり、自分が生活保護を申請し、明日の午前中に荷物を持って、まず福祉事務所に出向き、それから施設に行ってチェックインすると教えてくれた。
私は、宇海くんにこう聞いた。
「荷物は多いですか? 必要なら、施設まで運ぶのを手伝いますよ。ちょうど明日は空いていますから」
彼は少しためらった後、「それではお願いします」とうなずいた。
私の「もう一つの意図」を宇海くんは察していると思う。
彼がホームレスになって初めてリサイクルショップへアルミ缶を売りに行ったとき、私は一緒にアルミ缶を運ぶことを申し出た。その日、彼は4208円を稼ぎ、私は数日後、『アルミ缶買い取り体験記』というルポを書き、ニューズウィーク日本版ウェブサイトに掲載された。
その記事は多くの人に読まれた。つまり、アルミ缶を売った宇海くんも、その様子を取材して記事に書いた私も、2人とも〝豊作〞だったのだ。
今回も「取材」であることを感じているのだろう。
ただ、今回は行く先が違う。そこは「家がない」「失業した」「生活に困っている」といった生活困窮者のための入居施設なので、一般人に公開されておらず、入居者以外の第三者は入れないかもしれない。
「飽きてしまった」
私たちは道を歩きながら話した。
宇海くんがこの福祉事務所に生活保護を申請することを選んだのは、国土交通省が以前、荒川沿いに住むホームレスに渡した「警告」の紙を見たからだという。
その紙の表面には「あなたの居住地が国有地であり違法行為である……」と通知され、紙の裏面には複数の区役所福祉部門の所在地と電話番号がずらりと記載されている。意味は明確で、「ここを早く撤去し、福祉部門に生活保護を申請しなさい」ということである。まさに宇海くんはそれに従ったのだ。