<ノーベル賞受賞後の研究と興味、賞金を原資に財団を立ち上げた理由と活動継続の原動力、「グエー死んだンゴ」にまつわる意外なエピソード、日本の基礎科学研究への思い、そして若者に伝えたいこと──東京科学大学栄誉教授でオートファジー研究の第一人者である大隅良典氏に独占インタビューで聞いた>

普段は科学にさほど興味がなくても、ノーベル賞の科学三賞(物理学賞、化学賞、生理学・医学賞)が発表される毎年10月は、「今年は日本人が受賞するかな」とソワソワする人は多いのではないでしょうか。実際に日本人が受賞すれば、国民として誇らしい気分になり、「やはり日本の科学力はすごい」と胸を張りたくなるでしょう。

1900年代のノーベル科学三賞の日本人受賞者は5人。2000年代はこれまでに22人を数えます。一見、日本の科学力は増しているように見えますが、近年の受賞者が「日本の基礎研究は危機的な状況にある」と警鐘を鳴らしていることは知っているでしょうか。

2016年にノーベル賞生理学・医学賞を受賞した大隅良典・東京科学大学栄誉教授もその1人です。しかも、受賞後にノーベル賞の賞金を原資として自ら基礎科学を支援する財団を立ち上げ、今年で10周年になります。

科学ジャーナリスト茜灯里が、気になるトピックスについて関係者に深掘りするインタビュー企画「茜灯里の『底まで知りたい』」。今回は大隅先生に、「ノーベル賞受賞後の研究と興味の変遷」「オートファジーへの世間の注目について思うこと」「大隅基礎科学創成財団を続けるモチベーション」「クラウドファンディングに初挑戦」などについて、大いに語っていただきました。

【今回のテーマ】ノーベル賞受賞後の活動と基礎科学への思い

ノーベル賞受賞者は受賞時にメディアに大きく取り上げられるが、「その後の研究・活動」についてはなかなか知る機会がない。現在、大隅教授はどのような研究をし、どのような活動に情熱を注いでいるのだろうか。

また、近年は一般にも「オートファジー」が注目されている。オートファジーの第一人者は、その状況をどのように見るか。一方、基礎研究への支援を掲げる大隅基礎科学創成財団の助成制度は今年で10期をむかえる。基礎科学への思いと多くの年齢層へ訴求するための工夫についても聞いてみた。

「今もずっと研究は続けている」

 大隅先生が「オートファジーの分子機構の解明」でノーベル賞を受賞されてから、世間にも「オートファジー」という言葉がかなり知られるようになりました。いっぽう、メディアは受賞時に集中して報道しましたが、「その後の大隅先生の研究」はなかなか追えていません。ノーベル賞受賞からこれまでの10年間の研究の歩みや、興味の対象の変遷を教えてください。

大隅 ノーベル賞はかなり過去の業績に対して与えられることが多いので、私がノーベル賞をもらったのは71歳のときでしたが、その頃は私自身の研究はピークを過ぎた頃だったかなと思います。もちろん、今もずっと研究は続けていますよ。

私は間口を広げるというよりは、自分が始めた酵母のオートファジーの分からないことをなくしたいという気持ちで研究をしています。

今はオートファジーの研究が色々と広がって、注目されていることが多いのですが、私は「今、みんながやっていることをやろう」というようなスタンスでは、研究を続けていません。ずっと、酵母という小さな細胞を相手に、オートファジーの謎を解きたいというスタンスで続けています。

「役に立つからやる」という呪縛
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