2016年の米大統領選でドナルド・トランプがMAGA(アメリカを再び偉大に)のスローガンをぶち上げてから10年がたった。その政治・社会的な勢いはいまだ衰えていないようだが、どうにも欠けているものが一つある。ファッション性だ。

そもそもMAGAの諸君は目立ちたがり屋で騒々しく、およそ柔軟性を欠くから、端的に言えば趣味が悪い。いい例が、消防車みたいな真っ赤に醜悪な書体でロゴを書き入れたMAGA帽子。あれをかぶったら、どんなに素敵なコーディネートもぶち壊しだ。

フロリダにあるトランプ邸「マールアラーゴ」風のメークもそう。ファンデーションを塗りまくるから顔が平たく見え、誰の肌もマットベージュに染まってしまう。

ちなみにトランプは国産高級ブランド「フローシャイム」の革靴が大好きで、サイズなど気にせず男の閣僚たちに配ったとされる。それで悲しいかな、国務長官のマルコ・ルビオは公務の場で、妙にぶかぶかの靴を履いた姿を写真に撮られることになった。

ぶかぶかの靴を履いたルビオ国務長官
ぶかぶかの靴を履いたルビオ国務長官 CHIP SOMODEVILLA/GETTY IMAGES

これまた悲しいかな、今や何百万ものアメリカ人が次期大統領候補としてJ・D・バンス(副大統領)やクリスティ・ノーム(前国土安全保障長官)のような人物に期待しているのは紛れもない事実。しかし、だからと言ってバンスやノームのファッションをまねしたがるかと言えば、(少なくとも個人的には)それはないと思う。

政治的な優劣はともかく、こと美的センスに関する限り、リベラル派はいつだって保守派を圧倒している。私はずっとそう信じていた。でも気が付くと、この私があのタッカー・カールソン(MAGA派のトークショー司会者で、イラン戦争でたもとを分かつまではトランプの盟友だった)のグッズを売るオンラインショップで最高にクールな帽子を見つけ、思わずショッピングカートに入れていた。ネイビーブルーの野球帽で、NYCの文字が刺繍されているのだが、そのCの文字が旧ソ連の国旗にあった槌(つち)と鎌のマークになっているやつだ。

左派が絶賛のデザイン