大西洋を航行中のクルーズ船内でハンタウイルスの感染が発生し、3人が死亡した。クルーズ船「MVホンディウス号」は現在、アフリカ西岸沖の島国カボベルデ沖に停泊しており、これまでに2人の感染が確認され、5人が感染の疑いがある。
患者の症状は急激に進行し、発熱や消化器症状に始まり、肺炎、呼吸困難、そしてショック状態に陥った。1人が危篤状態に陥り、別の1人は救急艇で船外へ搬送された。5月6日には、ハンタウイルスの中でも稀な「アンデス型」が感染者から確認された。これは、公衆衛生当局が最も警戒する「ヒトからヒトへの感染」が起きる性質を持っている。
しかし、疫学者らはパニックに陥っていない。ロックダウンも渡航制限も、パンデミックの警告も出されることはないだろう。かつての流行で感染者の30〜60%を死に至らしめたこの病気は、皮肉なことにその「致死率の高さ」ゆえに、世界的な危機を引き起こす可能性が低いのだ。
ジョンズ・ホプキンス健康安全保障センターのアメッシュ・アダルジャは「パンデミックの可能性を左右するのは、致死率ではなく、感染の仕組みだ」と述べる。「パンデミックを引き起こす生物学的な鍵は、病原体が人をどれほど重症化させるかではなく、人から人へどう移動するかにある」
新興感染症の追跡で豊富な経験を持つウイルス学者のトーマス・G・クシアゼクも、「このウイルスは今に始まったものではない。もし流行病になる素質があるのなら、とっくの昔にそうなっていたはずだ」と同意する。
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