[6日 ロイター] - 豪華クルーズ船、MVホンディウス号で「ハンタウイルス」の集団感染が発生し、3人が死亡、他に5人について感染の確認、もしくは感染した疑いが報告された。世界保健機関(WHO)は、広範な公衆衛生上の脅威に発展する可能性は依然低いとしている。
◎クルーズ船で何が起きたのか
WHOは6日、MVホンディウス号に関連して3人の死亡者を含む計8人のハンタウイルス症例(確認事例と疑い事例を含む)を発表した。
船の運航会社オーシャンワイド・エクスペディションズによると、同日に3人が船から搬送され、うち2人は重症。別の患者1人は南アフリカで集中治療を、スイスに帰国した男性1人はチューリヒで治療を、それぞれ受けている。
今も約150人が乗るクルーズ船は3日からアフリカ西部の島国カボベルデ沖に停泊していたが、6日午後にはスペイン領カナリア諸島に向けて出発する予定。症状のない乗客(現在船内にいる全員)はカナリア諸島に到着次第、下船が許可される。スペイン政府は、スペイン人乗客14人を軍の病院で隔離し、その他の乗客は各国の指針に従って本国に送還・隔離されるとしている。
◎ハンタウイルスとは
ハンタウイルスはネズミなどの齧歯(げっし)類が媒介するウイルスで、人に感染して病気を引き起こすことがある。WHOの推定では、世界で毎年1万―10万人の感染者が発生しており、ウイルスの型によって重症度は異なる。
今回船内で特定されたのは、通常アルゼンチンやチリで流行するアンデス・ハンタウイルス。ホンディウス号は4月1日にアルゼンチンを出港していた。
◎感染の仕組み
主にネズミやマウスとの接触、あるいはその尿、糞、唾液を通じて感染する。汚染された場所の清掃中にウイルスが空気中に舞い上がることが多い。これに比べ、汚染された表面に触れることによる感染はあまり一般的ではない。
アンデス・ウイルスは、人同士が密接かつ長時間接触することで広がる可能性がある唯一のハンタウイルスとして知られている。
WHOは6日、対人接触による感染力が高まるようなウイルス変異の報告は受けていないが、ホンディウス号の船内で人から人への感染が一部起きたと考えていると説明した。研究によると、このウイルスは症状が出た初期段階に人にうつりやすい傾向がある。
WHOの感染症対策担当責任者マリア・ファン・ケルクホーフェ氏は6日ロイターに対し、今回の「密接な接触」は船内の客室や二段ベッドの部屋を共有することなどを指すと説明した。専門家は、感染した乗客との接触状況に基づき、どの乗客が高リスクか低リスクかを判別する作業を進めている。
◎症状
地域によってウイルスの型が異なり、症状も様々で、無症状の場合もある。
WHOによると、症状は通常、ウイルスへの曝露(ばくろ)の1―8週間後に現れ、発熱、筋肉痛、胃腸の不調などが含まれる。オックスフォード大学パンデミック科学研究所のアンドリュー・ポラード教授は、潜伏期間は通常2―3週間程度だと述べた。
アンデス・ハンタウイルスを含む米州の型は、ハンタウイルス肺症候群を引き起こすことがある。これは急速に進行して肺に水が溜まり、心臓の合併症を併発する症候群だ。アジアや欧州で一般的な型の致死率が1―15%であるのに対し、ハンタウイルス肺症候群の致死率は最大50%に達するとWHOは指摘している。
◎治療法はあるか
ハンタウイルス感染症に対する特効薬はないため、現在は安静や水分補給などの対症療法が中心となる。患者によっては人工呼吸器などの呼吸補助が必要になる場合もある。
予防策は、清掃の徹底により齧歯類との接触を抑えることが中心。アウトブレイク(集団感染)の間は、接触歴を追跡することで、ウイルスに曝露した可能性がある人の早期治療、予後の改善、さらなる感染拡大の防止につながる。
◎一般公衆へのリスク
専門家によると、船内は人同士の距離が密接なためインフルエンザなどの流行は比較的よくあるが、クルーズ船でのハンタウイルス集団感染は異例だ。
今回の感染についてWHOや各国専門家が調査を行っているが、一般大衆に広がるリスクは依然として低いとWHOは説明している。
ポラード教授は、原因ウイルスが特定されているため、船内での封じ込めや隔離、帰国者への対応など、公衆衛生上のプロトコルによって管理が可能だと述べた。
世界的にはハンタウイルスの感染は続いており、WHOは2025年後半、米州で症例が増加していると警告を発した。