ハンタウイルスの場合、重症化はあまりに急激だ。数週間の潜伏期間を経て発症すると、わずか数日で呼吸不全に陥る。その分、感染の連鎖は断ち切られやすい。

モンタナ大学のアンジー・ルイス准教授は「人間は、いわば巻き添えを食らっているにすぎない」と言う。「ハンタウイルスはヒトの間で広がるような作りにはなっていない。本来、ネズミなどの齧歯(げっし)類の宿主の間で感染するように適応しているからだ」

疫学者らが警戒を続けるのは、ハンタウイルスが「効率的な感染力」を獲得する可能性を完全に否定できないからだ。だがそれには、「ウイルスの細胞内への侵入方法、組織内での増殖方法など、多くの要素が連動して変化する必要がある。現状では、そこまでの進化が簡単に起きるとは考えにくい」とワイスは述べる。

「その障壁は巨大だ」とルイスも言う。「人間に繰り返し感染し、変異と淘汰の機会を繰り返さなければならない。もし、野生の宿主(ネズミ)の間で有利な特性が、たまたま人間への感染にも有利に働くようなことがあれば不安材料になるが、それは現時点では推測の域を出ない」

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