Balazs Koranyi Francesco Canepa
[フランクフルト 30日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は30日、予想通り政策金利を据え置いた。インフレ高進への懸念も示し、年内に複数回の利上げを実施するとの市場観測が強まった。初回の利上げは6月になる公算が大きいとみられている。
ECBは主要政策金利の中銀預金金利を昨年6月以降2.0%に据え置いている。
ユーロ圏のインフレ率は今月、ECBの目標である2%を大幅に上回る3%に上昇。イラン戦争で原油価格が約4年ぶり高値に押し上げられているため、インフレ率は一段と上昇する見通しで、二次的影響を通じてインフレスパイラルを引き起こす可能性がある。
ラガルドECB総裁は記者会見で、金利据え置きの最終決定は全会一致だったとした上で、利上げの可能性について政策当局者が「詳しく」議論したと明らかにした。また、この日の決定は「なお十分とはいえない情報に基づきつつも、十分な検討を経て意思決定を行った」とし、次回6月の会合が新たな評価を行う「適切な時期」になると述べた。
一方、「不確実性は非常に高く、次の政策会合で改めて検討する必要がある」とし、戦争の早期終結とエネルギーショックの影響が限定的であることを前提に構築したシナリオについて「われわれの基本シナリオから確実に離れつつある」と語った。
ECBは声明で「インフレの上振れと成長下振れのリスクが強まった」と指摘。「戦争が長引いてエネルギー価格の高止まりが長く続くほど、広範なインフレや経済への影響が強まる公算が大きい」とした。
金融市場では現在、年末までに約72ベーシスポイント(bp)の利上げを織り込んでいる。ECBが2022年に対応が遅れたと批判された経緯もあり、インフレスパイラルを早期に抑え込もうとするとの見方が背景にある。
実際、LCマクロ・アドバイザーズのロレンツォ・コドーニョ氏は「インフレの経験が非常に記憶に新しいため、企業は22年よりも早く値上げに動き、労働者もより早く賃上げを確保しようとするだろう。これがインフレの進行を加速させる可能性が高い」と警戒感を示している。
もっとも、今回の利上げサイクルは22年に比べればはるかに穏やかなものになる可能性が高い。当時ECBは急激な物価上昇を抑えるため、1年間で計450bpの利上げを余儀なくされた。現在は物価上昇圧力がはるかに弱く、二次的なインフレ効果はまだ表れておらず、労働市場はより軟調で、金利はすでに高い水準にあり、経済成長はほぼ停滞状態にある。
ECBは「より長期のインフレ期待は依然しっかりとアンカーされているが、より短期の期待は大幅に上昇した」とした上で、「政策理事会は特定の金利経路に事前にコミットしない」と表明した。
<エネルギーショックが成長を圧迫>
エコノミストの間では、エネルギーショックだけで経済成長を最大0.5%ポイント押し下げる可能性があるとの見方がある。これはユーロ圏の2027年の成長予測のおよそ半分に相当する。今年第2・四半期は戦争の影響ですでに厳しい見通しとなっており、域内最大の経済大国であるドイツはマイナス成長に陥る可能性もある。
しかし、こうした中でもラガルド総裁は「スタグフレーション」という概念は現在の状況には当てはまらないとの認識を示し「それは1970年代にとどめておくべき用語だ」と述べた。
<6月会合から少なくとも2回利上げか>
ECB政策当局者は、イラン紛争が早期に決着しエネルギー価格が速やかに低下しない限り、次回6月会合から少なくとも2回の利上げに踏み切る可能性が高い。協議に近い2人の関係筋がロイターに明らかにした。
同関係筋によると、原油海上輸送の混乱が続き、北海ブレントのスポット価格が1バレル=100ドル超で推移する場合、最初の利上げは6月になると見込んでいる。また、3月に公表されたECB見通しの基本シナリオを踏まえれば、少なくとも2回の利上げが見込まれると述べた。
こうした見通しの一部は、30日の理事会でも既に議論されており、複数の政策当局者が利上げを支持したという。
関係筋の1人によれば、30日の議論は主として6月会合を念頭に置いたものであり、見通しに根本的な変化がない限り、政策対応が必要になるとの認識について、参加者の間に大きな異論はなかった。
もう1人の関係筋は、米国とイランの間で合意が成立して紛争が終結し、エネルギー価格が下落すれば、見通しはなお変わり得ると強調した。
ECB報道官はコメントを控えた。