法医学者の考える津波対策はただ一つ

ここまでで、津波の本当の怖さはおわかりいただけたと思います。では、津波で命を落とさないようにするためにはどうすればいいのでしょうか。

私たちが高エネルギーから身を守る術を持っていればいいのですが、津波は、防波堤や巨大な岩、ビルをいとも簡単に破壊してしまいます。

人が防御するのは不可能と考えるべきでしょう。

となると、助かる方法はただ一つ。

高エネルギーを発生させる津波からできるだけ早く、遠くに逃げること。これしかありません。

津波はいつやってくるかわかりませんし、日本から遠く離れた場所で地震が起こった場合も海をつたってやってきます。巻き込まれたら高エネルギー外傷を負いますから、まず助かりません。「津波=高エネルギー=死」の認識を持って、1分1秒でも早く逃げることが重要です。

そもそも、なぜ東日本大震災では多くの人が津波で亡くなったのでしょうか。そこには、「避難慣れ」が大きく影響していたように思います。

3月11日の直前、宮城県沖では何度も地震や津波が起こっていました。

3月9日には宮城県沖でマグニチュード7.3、最大震度5弱の地震があり、津波注意報が発令されて岩手県には60㎝の津波が観測されていました。翌10日にも宮城県沖でマグニチュード6.8の地震が発生しています。

度重なる地震に多くの人が慣れてしまい、「今回も津波は大したことないだろう」という油断を生んでしまったのではないかと思われます。

「一応避難するから」と、家に必要な物を取りに戻り、津波から逃げ遅れて亡くなったケースや、隣近所でも助かった人とそうでない人、生死が分かれたケースもあったと聞いています。

また、岩手県の住宅街では、ある家は無事なのに、その隣の家はみるも無惨に潰れているといった光景も目の当たりにして、悲しい気持ちになりました。昨日までは同じご近所さん同士で仲良くしていた人でも、これほどはっきりと明暗が分かれてしまうのです。こう言っては身も蓋もないかもしれませんが、自然災害には「運」もあるのかもしれません。

加えて、当時は3月で寒い季節でした。冷え切った避難所に進んで行きたいと思えない気持ちはよくわかります。

このように、さまざまな要因が重なって大きな被害につながったのではないかと想像します。

ただ、確実に言えることが「一つだけ」あります。

避難先で命を落とさないために
【関連記事】