Kentaro Sugiyama

[東京 28日 ロイター] - 日銀は4月の利上げを見送ったものの、反対票が3人に上るなど、この先、利上げに向けた議論が一段と進みそうだ。日銀の公式見解を示す「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では物価上昇への警戒感が示され、日銀ウォッチャーの間では、総じて「タカ派的」と受け止められている。

「2%の物価安定目標」を巡っても、到達時期を「2026年度後半から27年度にかけて」と事実上維持。6月か7月の会合での追加利上げ観測は温存された。

日銀は物価見通しについて、前回1月の展望リポートまで「見通し期間の後半には『物価安定の目標』とおおむね整合的な水準で推移する」としていた。今回、新年度入りに伴って見通し期間が25─27年度から26─28年度へと1年シフトしたが、従来の目標達成時期は実質的に据え置かれたかたちとなった。

展望リポートでは、消費者物価指数(CPI)の前年度比上昇率が、コア(生鮮食品を除く)、コアコア(生鮮食品・エネルギーを除く)ともに1月時点の見通しから大きく引き上げられた。さらに、今回初めて公表された28年度の物価上昇率見通しも、コアが2.0%、コアコアが2.2%となった。

リスクバランスに関しては、「物価上昇率が大きく上振れていくリスクが顕在化し、それがその後の経済に悪影響を及ぼすことがないよう、十分に留意する必要がある」との表現を新たに加えた。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美チーフ債券ストラテジストは「一時的に成長率が落ちても、物価が2%に向かう動きが途中で途切れてしまうわけではないとの見方が示された」と指摘。展望リポートそのものの内容ではないとしつつも「3人の政策委員が利上げを提案した点もタカ派サプライズだった」と話す。

<ハト派サインで円安警戒していた市場>

こうした点が注目された背景には、日銀がハト派的なシグナルを発することへの市場の警戒感があった。「中東情勢を巡るリスクを過度に強調し、次の利上げ時期が見通しにくいかたちで示されれば、市場がハト派的と受け止め、円安が進みかねない」(ソニーフィナンシャルグループの石川久美子シニアアナリスト)との見方が出ていた。

今回の展望リポートは、こうした円安リスクを意識し、市場に過度なハト派サインを送らないよう配慮した内容と言える。実際、外為市場でドル/円は早期利上げ観測を背景に円高方向に振れ、債券市場でも政策見通しを反映しやすい中期ゾーンで利回りが上昇した。

政策運営の方針も、引き締め方向への姿勢が維持された。日銀は「現在の実質金利がきわめて低い水準にある」との認識を改めて示し、「経済・物価・金融情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」と説明した。

ドイツ証券の小山賢太郎チーフエコノミストは、リスク要因として中東情勢を巡る「不確実性」への言及がなかった点を踏まえ、「6、7月の利上げの余地を残している印象だ」と述べた。さらに「今年度後半から物価安定目標の達成が視野に入る中で、遅くとも10月までに政策金利を1%まで引き上げる考えを暗に示唆している」と指摘する。

<注目の総裁会見>

焦点は、この後の植田和男総裁の記者会見に移る。日銀は今回、物価達成時期と政策運営方針の表現を通じて追加利上げの選択肢を明確に残した一方、時期を特定する踏み込んだシグナルは示さなかった。総裁が会見で具体的な利上げ時期に踏み込む可能性は低いとみられるが、日銀として何を最も重視して政策判断をするのか注目される。

ドイツ証券の小山氏は、総裁会見の注目点は、日銀が利上げを見送った「理由」にあると指摘する。その理由次第で、次回の利上げタイミングに対する市場のコンセンサスは大きく変わり得るという。

仮に植田総裁が、次回会合以降に改めて利上げの是非を判断するとのニュアンスを示せば、市場は6月会合を強く意識する可能性がある。逆に、中東情勢の影響を前面に出す説明となれば、判断の重心は7月会合へ移りやすいと話す。

(杉山健太郎 編集:橋本浩)

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