私は30年以上にわたり、マイクロソフトやグーグル・クラウド・ジャパンといったグローバルテック企業の最前線でAIやデータ分析事業を担当してきました。数字と論理こそが最適解を導き出すと信じ、データの客観性を武器に戦ってきた自負があります。
しかし、そんな「データのプロ」である私も、不動産投資に関しては失敗の連続で、失敗しながらその事象を整理し正解を模索してきました。この手痛い原体験から学んだのは、不動産投資を単なる「物件(点)」の購入として捉える危うさだと思います。
成功への鍵は、個別の物件固有の「非体系的リスク(Unsystematic Risk)」を排除し、戦略的な「線」と多角的な「ポートフォリオ(面)」で資産を制御することにあります。本稿では、IT戦略家の視点から、不動産投資を「予測可能なプロジェクト」へとアップデートするための本質を分かりやすく解き明かしていきたいと思います。
1. 不動産投資の真髄:「帳簿上の赤字」で現金を残す
株や証券等の投資は、相場や利回りなどの外部要因が大きな変動パラメーターとなるのに対し、不動産投資においては、所得や資産状況等の投資家個人の内部要因の変動が影響してきます。
金融商品の多くは、利益(配当や譲渡益)に対して約20%の課税がなされます。一方、不動産投資の最大の魅力は、「実際には現金が出ていかないのに、経費として計上できる減価償却費」にあります。
■減価償却による「節税」のメカニズム
建物の価値は時間の経過とともに減少すると考え、その分を数年にわたって費用化するのが減価償却です。
不動産所得 = 家賃収入 ー(管理費・支払利息 + 減価償却費)
この計算の結果、不動産所得が「帳簿上の赤字」になれば、給与所得や他の所得と損益通算ができ、所得税や住民税の還付を受けることが可能です。つまり、手元には家賃キャッシュフローが残りつつ、税金が安くなるという「二階建て」のメリットが得られる場合があるということです。