[21日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)の次期議長に指名されたケビン・ウォーシュ元理事は21日に行われた上院銀行委員会の公聴会で、FRBの政策金利が高すぎるから引き下げるべきだというトランプ米大統領の見解に同意するかどうか一度も明言しなかった。それを直接尋ねた議員はいなかった。
しかし、民主党議員とのしばしば攻撃的なやり取り、共和党議員との友好的なやり取りに費やされた2時間半で、ウォーシュ氏の職務に臨む態度や現在の過熱する政治情勢について多くの洞察が得られた。以下に5点をまとめた。
<政治と大統領>
委員会トップの民主党議員エリザベス・ウォーレン氏はウォーシュ氏にトランプ氏が2020年の大統領選挙で敗北したのかと質問した。選挙に勝ったと主張し続ける大統領に対して過度に服従していないかどうかを示すために、彼女が他の候補者に繰り返してきた質問だ。実際にはトランプ氏は勝利していない。
ウォーシュ氏は回答をはぐらかした。「ええと、もしも私が承認されれば、われわれはFRBから政治を排除するよう努める。この議会が何年も前にその選挙結果を認定したと信じている」。ウォーレン氏が質問を繰り返すと、ウォーシュ氏は同氏の言葉を遮るように「金融政策から政治を排除し、政治から金融政策を排除する」のが不可欠だと述べた。
ウォーシュ氏は、トランプ氏が利下げを約束させようと圧力をかけたのではないかという点について、繰り返し追及を受けた。ウォーシュ氏は共和党のジョン・ケネディ上院議員に「大統領とどのような議論をした際でも、政策金利の判断をあらかじめ決定したり、約束したり、固定したり、決断したりするように求められたことは一度もない。また、私が同意することも決してない」とし、質問に感謝すると述べた。
<クック理事とパウエル議長について>
トランプ氏が住宅ローン申請時の虚偽記載疑惑を理由に解任しようとしているリサ・クックFRB理事について問われると、ウォーシュ氏はコメントできないと述べた。「もしも私が何かを主張すれば、それはFRBが自らの守備範囲にとどまるべきだということであり、私がその件について意見を述べるのは不適切だ」
クック氏は職を維持するために提訴している。ジェローム・パウエルFRB議長はこの件をFRB史上で「最も重要な法的事例」と称し、今年初めに最高裁の口頭弁論に出席した。
ウォーシュ氏は近く判決が出ると見込んでいると述べた。「もしも私がこの議会で承認されれば、私は憲法、最高裁の判例・判断、FRBの最良の伝統に従う」と語った。
ウォーシュ氏はまた自らが5月15日までに承認されない場合、パウエル氏が法律の規定に従って暫定議長として留任できるかどうかという質問もはぐらかした。
共和党のトム・ティリス上院議員は21日、司法省がFRB本部の改修工事費用の超過を巡ってパウエル氏に対する捜査を継続している限りにおいて、ウォーシュ氏の承認を阻止すると改めて表明した。
ウォーシュ氏は「私は空席補充法が連邦準備制度に適用されるかどうかを判断する立場にない」と述べ、大統領が特定の場合に機関の暫定トップを任命できる法律に言及した。
<FRB会合、議長会見の回数減少か>
ウォーシュ氏はFRBの保有資産規模を縮小し、インフレをより正確に測定し、金融政策に直接関連しない問題について財務省や政府の他部署と協力を深めるという広範なFRB改革を約束した。また、FRBが国民との間や内部でどのようにコミュニケーションを取っているかについても改めたいと考えている。
ウォーシュ氏は年間に現在8回開催されている連邦公開市場委員会(FOMC)の開催回数の変更について含みを持たせたように思われた。法律で最低4回の開催が義務付けられていると指摘しつつ「4回は十分でないから、それ以上の回数を開催するのが適切だ。しかし、27年のFOMC開催日程について検討すら始めていない」と付け加えた。
パウエル氏が18年以来実施しているように毎回の会合後に記者会見を開くことを約束するかと問われると、ウォーシュ氏は明言しなかった。
ウォーシュ氏は「FRB議長や他のFOMCメンバーの金融当局者たちは現在、非常に頻繁に発言している状況だ。透明性は全く欠如していない。しかしこれだけは言いたいが、私は真理の探究が反復よりも重要だと考えている」と述べた。記者からの質問に答えるつもりはあるかと問われて「もしも記者会見が開かれれば、その時の記者が何を考えているか聞くのは義務だと考えている」と述べた。
<インフレ見極めに新アプローチか>
ウォーシュ氏は「基調的な」インフレ傾向を見極めるためのより良い方法を望んでおり、FRBが最初のプロジェクトの一つとしてそのような指標を特定するために公的部門と民間部門の専門家による「データ・プロジェクト」を実施すると述べた。
「私が好む指標は全てのテールリスクを除外したいわゆるトリム平均と呼ばれるものだ」と語った。極端なデータを除去して政策立案者にインフレの重心をより正確に示すダラス連銀トリム平均のような指標を明らかに指していると思われる。現職のFRB当局者の多くはこのような指標を定期的に参照していると述べている。
<AI、インフレと労働市場>
トランプ政権の当局者たちは人工知能(AI)の急速な導入がもたらす生産性の向上がインフレを迅速に引き下げ、FRBが利下げできるようになるとしている。
ウォーシュ氏もそうした可能性に同意したが、全面的には同意しなかった。
「FRBのモデルを見直し、この技術革新の循環が時間の経過とともに価格水準を改善しインフレに関するFRBの責務を容易にする可能性がある一方で、それがFRBのもう一つの責務である雇用にとって何を意味するのか検討することが重要だ」と述べた。「生産性は向上するだろうという確信があるが、労働市場に対する影響はいつになれば表れるかについてそれほど確信がない。生産性の向上と労働市場に対する影響の間の時間差、それこそがFRBの思考の中心になるはずだ」