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Noriyuki Hirata

[東京 21日 ロイター] - 日経平均を東証株価指数(TOPIX)で割って算出する「NT倍率」が21日、終値ベースで過去最高を更新した。中東情勢への警戒感がくすぶる中でTOPIXの伸びが鈍い半面、世界的なハイテク株高の流れを受けて半導体関連株の寄与度が高い日経平均が最高値圏で強含んでいるためだ。

NT倍率は大引け時点で15.74となり、2025年10月31日につけたこれまでの最高値である15.73を上回った。一時15.76に上値を伸ばしており、同11月4日につけた取引時間中の最高値15.78に迫る場面もあった。

<FOMOを意識>

「半導体株を持っていないと指数に勝てない。置いていかれるリスク(FOMO、Fear-of-Missing-out)が意識されている」と三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大西耕平上席投資戦略研究員は指摘する。

この日は8%超高と大幅上昇したソフトバンクグループ(SBG)の急伸ぶりが象徴的とされる。傘下の英半導体設計大手アーム‌の株価急伸が好感されたが、その手掛かりは、初めての自社​製人工知能(AI)半導体への期待感で、その発表は3月後半と約1カ月前の材料。「買いの口実にされた」と、フィリップ証券の増沢丈彦株式部トレーディング・ヘッドは指摘する。

株式市場では中東情勢の先行き不透明感への懸念が根強い一方、米フィラデルフィア半導体指数(SOX)が14連騰し、連日の過去最高更新となっており、台湾の加権指数や韓国のKOSPIも過去最高を更新。世界的なハイテク株高の様相となっている。

グローバルな半導体株高の背景には、堅調な企業業績がある。オランダの半導体製造装置大手ASMLは15日、AI用半導体製造装置への需要が引き続き高まっているとして、2026年の売上高見通しを引き上げた。半導体受託生産世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は16日、通年の売上高見通し引き上げに加え、設備投資拡大の方針も示した。

<退避的な資金シフトも>

もちろん半導体関連企業も、中東リスクとは無縁ではない。ただ「現時点ではさほど心配されていない」と岩井コスモ証券の斉藤和嘉シニアアナリストは話す。供給不足の懸念があるナフサは、半導体材料としての使用量が少なく、過去の中東紛争時には生産に影響が及ぶ前に紛争が終結した経緯がある。重要資材のヘリウムガスは「世界第2位の産出国が米国で、レアアースほど深刻な問題にはならない」(斉藤氏)とみられている。

中東情勢が不透明な中、退避的に業績が確からしい半導体関連株に資金がシフトしている様子もうかがわれる。原油価格は90ドル付近で高止まりし、電気・ガスや運輸関連株はコスト高が連想され、手掛けにくさが意識されている。日銀が4月会合での利上げを見送るとの報道があり、この日は銀行株も振るわず「半導体関連株に資金が向かいやすかった」とフィリップの増沢氏は指摘する。

中東情勢が長期化してインフレが促されれば、スマホやパソコン、家電などの消費が減退し、半導体需要に悪影響が及ぶリスクもくすぶる。ただ、「データセンターの需要拡大ペースは大きい。需要減が民生品に限られるなら十分吸収できるのではないか」(岩井コスモの斉藤氏)との見方がある。

この日のTOPIXは相対的に寄与度の高い銀行や輸送用機器が軟調となって、小幅ながら前日比で下落し、これがNT倍率の拡大に寄与した側面もある。

<高まる発射台>

もっとも、足元ではTACO(トランプ氏はいつも尻込み)期待が相場を支えている側面がある。まだ米・イラン協議の着地点が見えているわけではなく、仮に協議が決裂して戦闘再開となれば、リスクオンが巻き戻されるリスクもある。とりわけ5万6000円からの上昇が急ピッチだったこともあり「(5万6000円から上方向は)真空地帯に近く、巻き戻す場合は下げが速まりかねない」(フィリップの増沢氏)との見方もある。

三菱UFJモルスタの大西氏は足元の投資家心理について「(日経平均は)いったん6万円をみたい様子もある」と指摘する。6万円の節目にはコールオプションのやや多めの建玉が観測されており、上抜ければコールの売り手によるヘッジのための先物買いが誘発されるとの見方もある。

一方、日米の中央銀行の金融政策決定会合や決算発表の本格化を控える中、発射台が高まることへの警戒感も高まり得る。6万円の大台を捉える場合でも「持続力は不透明」と三菱UFJモルスタの大西氏は話している。

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