Tom Bergin Chris Kirkham
[アムステルダム 20日 ロイター] - 米電気自動車(EV)大手テスラが1月、米規制当局に提出した年次報告書によると、同社が2025年度に払った米連邦税はゼロだった。
これは今に始まったことではない。
テスラは過去20年間に米国内で計2640億ドルの売上高を計上したが、この間に米連邦税を納めたのは1年だけだった。納税が少ない最も明らかな理由は、10年以上に及ぶ赤字期間の損失に関連して税控除を受け続けてきたことだ。米政府のグリーンエネルギー減税措置も、テスラの負担軽減に寄与した。
しかし、ロイターが同社と海外子会社の申請書類を精査したところ、これまで報じられていなかった別の大規模な節税手段が浮かび上がった。オランダとシンガポールにあるテスラの拠点が近年、計180億ドルの利益を計上しながら、両国で一切課税されていなかったのだ。「利益移転」と呼ばれる財務上の策を講じない限り、これらの利益は米国内で計上され、課税されていた可能性が高い。分析によると、多くの企業が常套手段とするこの手法により、テスラは米国での納税を4億ドル以上節約できた可能性がある。
ロイターは、欧州、アジア、北米の計14カ国におけるテスラと子会社の規制当局提出書類や、経営陣によるプレゼンテーション、公式声明を調査。さらに、米国の税務専門家3人を含む20人以上の株式アナリスト、自動車業界コンサルタント、学者に取材した。税務専門家らはロイターの分析を精査し、その結論と計算結果が現実的だとの見解で一致した。
テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)はこれまで、自身の企業は米国で公正な納税の回避を試みていないと述べており、大規模な節税はその主張と矛盾する。またマスク氏は昨年、政府支出削減に関してトランプ米大統領の顧問役を務め、米国の財政赤字について懸念を表明していた。
マスク氏は2024年、トランプ氏の大統領選挙活動に同行した際、聴衆に対し、自分は課税の「抜け穴の話をよく持ちかけられる」が、「かなり怪しい話だ。そんなことをするべきではない」と一蹴してみせていた。
テスラの納税慣行が法律に違反している兆候は見つからなかった。また、利益を海外に移転している企業はテスラ以外にも多い。
税制の有利な場所に利益を移転して節税する「利益移転」は、議論を呼ぶものではあるが、多国籍企業が抜け穴として利用する一般的な手法だ。
テスラの利益移転は2010年代初頭に始まったとみられる。同社はそのころ、1社以上の海外子会社に対し、特許や製品に関連するノウハウといった知的財産権を付与することを決定。これにより、知的財産が米国に置かれていれば米国で課税対象となるはずだった収益を、税率が低い別の地域で計上することが事実上可能になったとみられる。
テスラは利益移転を公式に認めておらず、オランダやシンガポールの拠点が税務計画においてどのような役割を果たしているのかも説明していない。
しかし、シンガポール規制当局への提出書類によると、現地子会社の「テスラ・モーターズ・シンガポール・ホールディングス」は23年から25年初頭にかけて、同子社が99%の株式を保有するオランダ法人「TMインターナショナル」から約180億ドルの利益を受け取っていた。TMインターナショナルは非居住の「パートナーシップ(合資会社)」として現地登録されている。登記簿によると、従業員はおらず、財務諸表の提出やオランダでの納税義務も課せられていない。
オランダとシンガポールのいずれの書類にも、パートナーシップの運営実態や、テスラ製品の製造・販売を担う姉妹会社との取引内容、そして利益を生み出す場所と方法が記されていない。シンガポールの書類によれば、テスラ・モーターズ・シンガポール・ホールディングスは、パートナーシップから受け取った利益についてシンガポールで課税されていない。
ロイターが取材した専門家らは、テスラ海外子会社の構造とパートナーシップの巨額利益を考えれば、知的財産権を海外に移転させるというテスラの決定に基づいてパートナーシップが存在しているのはほぼ間違いないと話した。パートナーシップは、知的財産権を利用して得た利益を移転する「導管」の役割しか果たしていないという。
ミシガン大学の税法教授ルーベン・アビヨナ氏は「これは完全に、低税率の管轄区域に利益を移転するためのものだ」と断言。他の2人の税務専門家もこの見方に同意した。
<全てはオースティンで決まる>
規制当局への提出書類によれば、テスラは何年もの間、米国よりも海外ではるかに多額の納税義務を報告してきた。長年にわたり売上高の大半を米国で稼ぎ、海外市場が伸びた今でも米国が売上高の約半分を占めているにもかかわらずだ。
書類によると、テスラが創業以来報告してきた海外での納税義務は計64億ドルに上る。米国で納税予定額を公表したのは2023年の一度きりで、額は4800万ドル。海外の納税総額はその130倍以上に相当する。
そうなった理由の一つは、テスラが黒字化する何年も前に採った措置にあるのかもしれない。
同社は15年の年次報告書で、海外子会社との間で「費用分担契約」を結んだことを公表した。この報告書やロイターが精査した他の資料には、契約の時期や目的についての具体的な説明はない。
費用分担契約は、米議会と内国歳入庁(IRS)が租税回避の手段になり得ると主張してきた手法だ。
テスラの海外事業の多くは、アムステルダム南東部に拠点を置く子会社「テスラ・モーターズ・ネザーランド」を通じて管理されている。直近でデータが利用可能な23、24年における同子会社の年間売上高は各280億ドルと、親会社の総売上高の約30%に相当していた。
ロイターが精査した書類や資料では、この売上高がどのように、あるいはどの程度、前出のシンガポール子会社のパートナーシップ企業が報告した利益に寄与したのかは不明だ。
ロイターの記者が昨年アムステルダムのビルを訪れた際、ステファン・ワークマンと名乗る幹部は、会社の構造は米テキサス州オースティンにあるテスラ本社が管理していると説明。「全てはオースティンで決まる。税務構造は米国で管理されている」と語った。
テスラが1月に米規制当局に提出した最新の年次報告書には、オランダとシンガポールの子会社で数十億ドルの利益を報告することを可能にしていた仕組みを、同社が最近廃止した可能性を示唆する記述がある。
ただ専門家らは、テスラはこの仕組みによって既に米国の税負担を少なくとも4億ドル軽減できた可能性が高いと述べている。