Amanda Cooper Samuel Indyk
[ロンドン 19日 ロイター] - 4月初めに米国とイランが停戦合意に至ったことで、米国株に対するTINA(他に選択肢がない=There Is No Alternative)取引が復活したようだ。和平への期待、米企業の力強い増益、エネルギーショックに対する米経済の相対的な耐性が、その要因だ。
過去1年間、米国勢を筆頭とする投資家は、ドル安によってリターンが底上げされる海外の割安な市場を探してきた。人工知能(AI)ブームや政府の財政支出拡大も、ソウルから東京、フランクフルト、ロンドンに至る市場の株価を押し上げてきた。
さらに中東の戦争とエネルギー価格高騰は信頼感を傷つけ、リスク市場に打撃を与えたが、今月初めの停戦合意発表を受けて米国株は再び史上最高値を更新している。
LSEG/リッパーのデータによると、停戦合意発表の直前から現在までに、世界の投資家は差し引き280億ドルを米国株に投じ、うち米国投資家が230億ドル近くを占めている。
年初から停戦合意までは、米国株から差し引き560億ドルが流出しており、うち米国投資家の分は約90億ドルだった。
停戦合意後、投資家はどの市場が最も有望かを再検討しており、決算シーズン初期の様子を見る限り、米国が依然として強そうだ。
大半の主要株式市場が戦争に起因する下落分を取り戻したが、中でも米S&P500種総合指数は米・イスラエルのイラン攻撃開始前の水準を2%上回るまでに回復している。
フランクリン・テンプルトン・インスティチュート(ロンドン)のグローバル投資ストラテジスト、マイケル・ブラウン氏は「この6年間で4度目の外生的ショックに見舞われたが、ショックの性質を考えれば、長期的に最高のパフォーマンスを示し、短期的に最も多額の投資を行い、最高の結果を出している経済(米国)に回帰するのは無理もない」と語る。
「TINA」取引は長年幅を利かせ、米国株は最高値更新を繰り返したが、トランプ政権2期目が始まった昨年1月ごろに後退。投資家は、「TIARA(There Is A Real Alternative=他に真の選択肢がある)」取引に軸足を移し、欧州と新興国市場が特に好まれた。
ファルコン・ウェルス・プランニングの創設者ガブリエル・シャーヒン氏は「『TINA』的な取引が起こっているようだ。投資家はS&Pの回復力を見て、エンジンがまだ動いていることに気づき始めている」と話した。
欧州や日本と比較して米国株の回復スピードが速いのは、米国がエネルギーの純輸出国であることに一因がある。
<世界を行って来い>
モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントの最高投資責任者、ジム・キャロン氏は10日のバーチャル座談会で「欧州株が米国株をアウトパフォームする」という昨年のコンセンサスが変化していると語った。
「われわれはもはや、そうなるとは考えていない。実際にポートフォリオで行動を起こしており、欧州のオーバーウエートを縮小してアンダーウエートにまで転換し、米国をオーバーウエートにすることを検討している」と述べた。
多くの主要投資銀行も、ここ数日で米国株の投資格付けを「中立」から「オーバーウエート」に引き上げた。テクノロジーセクターを中心に、堅調な企業収益が中東紛争の影響を和らげるとの見方からだ。
これまでに発表された第1・四半期決算では、エネルギーや銀行などの一部セクターが好調な一方、他は戦争の影響に苦しんでいる。LSEG/IBESのデータによると、S&P500社の同期の増益率は約14%と予想されている一方、欧州企業の増益率は4.2%にとどまる見込みで、大部分は石油・ガスセクターによるものだ。
国際通貨基金(IMF)は14日、2026年の米国の成長率予測を0.1%ポイントの下方修正にとどめて2.3%としたのに対し、ユーロ圏の成長率予測は0.2ポイント引き下げて1.1%とした。
投資家は停戦発表以降、それまで人気だった欧州やアジア新興市場への投資を減らしている。
EPFRのデータを引用したバンク・オブ・アメリカの17日の週間リポートによると、15日までの1週間で韓国の株式ファンドからは過去最大となる25億ドルが流出。欧州株からも2024年11月以来で最大の47億ドルが流出した。
米国株は年初からの累計で見ると300億ドルの純流出だが、LSEGのデータによれば、3月中旬時点に比べると流出額が約4分の1にまで縮小している。
S&P500は11日間で10%余りも急騰し、7000の大台を突破した。ドイツ銀行のストラテジスト、ジム・リード氏によれば、これは昨年4月にトランプ米大統領が「相互関税」を発表して株価が急落した後の回復スピードよりも速い。
リード氏は「S&P500がわずか11営業日で10%超上昇したのは、今世紀に入って15回しかない」と指摘した。