ドナルド・トランプ米大統領の側近たちは、かつて彼を「4次元チェスの達人」と呼んだ。常人には理解できない高度な戦略を読み切る人物だというのである。

【動画】中国、台湾、そして変化する戦争の性質

だがワシントン、台北、東京、そして世界の多くのシンクタンクで今、それとは別のゲームが検討されている。中国が台湾の奪取を決断したときに何が起こるのか──という戦争シミュレーションだ。

展開は、一般に考えられているより遅い。戦争シミュレーションは、中国海軍陸戦隊(海兵隊)が台湾の浜辺に押し寄せる場面から始まるわけではない。最初に表れるのは、より静かで不気味な兆候だ。中国の海警船による臨検、海底ケーブルの切断、島全体の停電……。こうした机上演習の狙いは、圧力がどの段階で危機に転じるのか、その分岐点を見極めることにある。

多くのシナリオが共有している前提がある。中国は徐々に締め付けを強め、アメリカは事態をエスカレートさせずに制御しようとするというものだ。輸送の護衛や戦力の再配置、外交的な反対表明は行うかもしれないが、あくまで慎重を期す。他の手段が尽きると、全面戦争のリスクが膨れ上がるためだ。

だが、トランプがイランを攻撃したことでこの前提は変わりつつある。

イラン戦争から得られる教訓は、中国がイランと同じだということではない。台湾防衛が容易だということでもない。焦点は、戦争に踏み切るかどうかの判断基準が政治によってどう変わるかだ。
台湾侵攻は多くの人の想像通りには進まない?
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