この概念を理解する日本に欠けている視点

岸田政権はその基盤の上に立ち、専任の大臣ポストを新設し、2022年には経済安全保障推進法を成立させた。2025年7月の日米合意では、その正式な文言において、経済および国家安全保障の両面で両国の足並みを明確に揃えた。

日本政府がこの概念を理解していないわけではない。日本政府に欠けているのは、大統領に直接アクセスできるマクロ戦略家が、軍事作戦の最中にシチュエーション・ルームから指揮を執る際に、この概念がどのような姿を見せるかという視点である。それは単なる政策の枠組みとしてではなく、実戦的な「運用的態勢」としての経済安全保障である。

ベッセントは、近年の歴代財務長官とは異なる経歴を持つ。数十年にわたりマクロヘッジファンドマネジャーとして活動し、ソロス・ファンド・マネジメントで最終的にチーフ・インベストメント・オフィサー(CIO)まで上り詰めた。その後、自ら設立したファンド、キー・スクエア・グループを運営した。

この経歴からわかるのは、彼がそのキャリアを通じて、主権国家の決定がいかに資本を動かし、通貨のダイナミクスがいかに地政学的圧力と連動し、金融市場がいかにステートクラフトの手段として利用され得るのかを思考し続けてきたということだ。ベッセントは、経済・金融ツールを軍事・戦略的パワーの単なる補完手段ではなく統合された構成要素として捉える、確固たる理論を携えて財務長官に就任したのだ。

ベッセントが唱える「3-3-3」経済論(財政赤字を対GDP比3%に削減、GDP成長率を3%に押し上げ、原油生産を日量で300万バレル増産)は、単なる経済政策ではない。米国の財政的レバレッジおよびエネルギーを背景としたレバレッジを同時に再構築することを狙ったものだ。

関税の引き上げを通商政策の問題としていては……
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