米国の対イラン軍事作戦「エピック・フューリー(壮絶な怒り)」が始まって約2週間が経過した3月12日、スコット・ベッセント米財務長官は、財務省内の「キャッシュルーム」でライブインタビューを受けていた。聞き手はスカイニュースのウィルフレッド・フロストで、議題は折しも日本経済についてだ。
開始から13分後、画面の外から側近が現れ、ベッセントにこう告げた。「大統領が直ちにお呼びです」。ベッセントはマイクを外し、午前10時22分に建物を後にした。
約2時間後、ベッセントは再びカメラの前に姿を現した。そして、イランの作戦は「予定を大幅に前倒しして進んでいる」とフロストに語り、米海軍は「おそらく多国籍連合と共に」軍事的に可能になり次第、ホルムズ海峡を通過する船舶を護衛することになるとの見解を示した。
また、戦費は約110億ドル(約1兆7000億円)に上っていると明かし、この数字は公表済みだと述べた。
ベッセントはこの戦争において単なる脇役ではない。ホルムズ海峡、制裁、石油市場、戦費調達に至るまで、彼は政権の「顔」としての役割を果たしている。これは従来のワシントンの慣例とは一線を画すものだ。そこで本稿では、米国が発しているこのシグナルの意味と、日本側の認識との間のギャップについて論じたい。
米財務省は、常に地政学的な影響力を持ってきた。ドルが基軸通貨である以上、必然的に財務長官というポストは重みを持つ。そして9・11同時多発テロ以降、その影響力は組織の役割として定着した。
テロ・金融情報局(TFI)の創設と専任の次官ポストの設置により、財務省は初めて地政学的戦略を遂行するためのインフラを手にした。その後のイラク、イラン、北朝鮮、そしてロシアに対する一連の制裁措置は、財務省が単なる脇役ではなく、米国の戦略的圧力の中核になり得ることを証明した。