保護主義の恩恵とコスト

中国のおかげでEUが得をするのはアメリカ産大豆のバーゲンセールだけではない。そもそもトランプがユンケルと手を打つ気になったのは、中国に白旗を上げさせるためだ。

中国製品だけに制裁関税を課せば、中国が受ける痛手ははるかに大きくなる。例えば中国製の航空エンジンに25%の関税を課せば、アメリカ市場における中国企業のシェアは激減するが、EUその他の国々の製品にも同率の関税を課せば、中国が特に不利な状況ではなくなる。

アメリカ市場のさまざまな産業分野で、中国勢の主要な競争相手はEU勢だ。だからEU製品への関税が棚上げされれば、中国は深刻な痛手を受ける。一方、中国市場ではEUは米企業とシェア争いをする立場。中国がアメリカ製品に報復関税を課せばやすやすとシェアを拡大できる。かくしてEUは米中貿易戦争でまんまと「漁夫の利」を得ることになる。

口先では自由貿易を賛美しつつ、不公正な通商慣行を一向に改めようとしない中国。だがトランプ・ユンケル合意の後では、中国も国内産業への手厚い保護を続けるべきかどうかの決断を迫られている。20年前なら保護主義的な政策も容認できたが、今の中国企業は強大な競争力を誇る。保護主義の恩恵と貿易戦争のコストをはかりに掛ければ、答えは明らかだろう。

From Project Syndicate

本誌2018年8月26日号[最新号]掲載

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