西オーストラリア州の小さな町ダーダナップに住む会計士のナターシャ・アールさんとその家族は、米国・イスラエル対イラン戦争による経済的な打撃を肌で感じている。

昨年5月にエミレーツ航空で予約した、ロンドンやパリ、ベルリン、ウィーン、ローマを巡る「一生に一度」の5週間にわたる欧州旅行。計画は、この紛争によって根底から覆された。中東での無人機(ドローン)やミサイル攻撃による混乱を避けるためルート変更を余儀⁠なくされ、およそ1万豪ドル(約111万円)もの追加費用がのしかかった。

「この休暇のために何万ドルも支払った」。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)以来最大となる世界規模での旅行の混乱のなか、今月末に出発を控えるアールさんはそう嘆き、「最終的には、少なくともその半額はエミレーツ航空から返金されるべきだ」と語った。

ペルシャ湾岸地域は、民間航空路線が交差する世界の中継地点となっているため、イランをめぐる紛争は、たった一つの地域の問題が、いかに急速に世界の航空網を麻痺させ、運賃を高騰させ、座席不足を招き、人々の休暇計画を混乱に陥れるかを浮き彫りにした。

紛争が3週目に入るなか、ドローンやミサイル攻撃の影響で、航空機がドバイ周辺上空で旋回待機を余儀なくされる事態が⁠常態化。年間約3670億ドル(約58兆6000億円)規模の中東の観光産業に、深刻な影を落としている。

航空データ会社シリウムによると、平時であれば、エミレーツ航空、カタール航空、エティハド航空の中東3社だけで、欧州とオーストラリア、ニュージーランド、および近隣の太平洋諸島を行き来する乗客の半数以上を輸送する。

今はミサイルやドローンの脅威によ⁠り、中東空域の大部分は閉鎖状態にあり、世界中で数万便に上る欠航やルート変更、スケジュールの見直しが発生。何百万人もの人々の旅程が乱れている。

カタールの首都ドーハに住むニュージーランド人のジェイコブ・ブラウンさん(34)は、友人の結婚式で付添人を務めるため母国へ向かう予定だった。しかし、ニュージーランドへのカタール航空便が欠航。急きょ車で隣国サウジアラビアの砂漠を走り抜けて首都リヤドへ向かい、そこからロンドン行きの飛行機に飛び乗った。

当初なら24時間以内で到着するはずの旅程だったが、空域閉鎖や度重なるフライトの混乱、遅延、さらに手荷物の紛失まで重なり、結果的に数日を要する過酷な旅となった。

「その日の朝にも首都の南でミサイルの迎撃が数回あったことを思うと、リヤドから飛び立つのはかなり神経をすり減らす体験だった」とブラウンさんは振り返る。

シドニー郊外のオレンジに住む障害者支援員のアディティヤ・クシュワハさんは、4月13日から29日の日程で、エミレーツ⁠航空でロンドンとパリへのドバイ経由の家族旅行を予約している。だが、予定通りに出発できるか確信が持てずにいる。

「どうすべきか、深いジレンマに陥っている」とクシュワハさん。旅行をキャンセルすれば1万ドル以上の損失が出る可能性があり、再び旅行費用を工面できるのは数年先になるだろうと頭を抱える。

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夢の休暇が悪夢に