<対イラン強硬論を支える歴史的記憶と、それを利用する政治家について>
イラン人もアメリカ人もこの戦争を望んでいない。この戦争を大多数の市民が支持しているのはイスラエルだけだ──イスラエルのイラン研究者ダビド・メナシュリはそう分析する。
対イラン戦争開始直後のイスラエルの世論調査では、イラン攻撃へのユダヤ系市民の支持率は93%に達し、その後も高い支持率を維持する。さらに「イスラム体制の転換」という戦争の最終目的が達成可能と考える人の割合も6割に上る。
テルアビブの広場には反戦を訴える市民が集まるが、その数は2023年10月のイスラム組織ハマスによる攻撃で多くのイスラエル市民が毎週集まって人質解放を訴えた数よりはるかに少ない数百人レベルだ。
「最終目的の達成」が不透明化するなかでも、イスラエルに厭戦ムードはない。では、なぜイスラエル社会は対イラン戦争にこれほどまでに前向きなのか。
背景にあるのはイランに対する根深い恐怖心だ。1979年のイラン革命以来、イランは一貫してイスラエル殲滅を掲げてきた。
仮にイランが核兵器を保有すれば、それが自国に向けられるという認識がイスラエル社会で強く共有されている。それはユダヤ人に対する歴史的迫害やホロコーストの記憶とも結び付いている。