大手プラットフォームとの新しい付き合い方

BBCは近年、YouTubeやネットフリックス、ディズニーなど米巨大プラットフォームに押されてきた。若い視聴者の時間は放送から動画配信やソーシャルメディアへ移り、BBCは自前の配信基盤iPlayer強化や大手プラットフォームとの新しい付き合い方を迫られている。

英紙フィナンシャル・タイムズ(3月25日付)は、BBC内部では組織が直面するのは存立に関わる脅威であり、最も重視されたのがブリティン氏の経営手腕と受け止められていると報じた。巨大テック企業で培った経営能力と技術理解に期待が寄せられる。

その一方で最も大きな懸念として浮上しているのが、報道・編集の現場を率いた経験の乏しさだ。元BBC幹部の間には「編集面の専門性を欠くことが弱点になりかねない」との見方がある。BBC会長は公共放送の編集文化と報道倫理を守る象徴だからだ。

「なぜ放送や制作の実績がない人物をトップに選ぶのか」

最大野党・保守党のダミアン・コリンズ元下院デジタル・文化・メディア・スポーツ委員会委員長は英紙タイムズ(同日付)に「BBCはアイデンティティーの危機に陥っているのではないか。なぜ放送や制作の実績がない人物をトップに選ぶのか」と疑問を呈している。

BBCはこの10年、実質ベースで大幅な資金減に直面し、人員削減や番組予算の圧縮を余儀なくされてきた。政治からは受信料制度の見直し圧力が強まり、視聴者は中立性への不信感を募らせる。そこへ動画配信とAIを核にするメディア環境の激変が押し寄せる。

デジタル化を進めるだけではBBCが直面する問題は解決しない。公共放送としての独立性、編集の信頼性、全国民に開かれた普遍的サービスという理念をどう守るのかが問われている。ブリティン氏は技術と経営だけでなく、BBCがなぜ必要なのかを語り直さなければならない。

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