銀行は今も年間数兆ドル規模の小切手やACH送金を処理し、決済に要する利息を数十億ドル得ている。一方、この間に顧客(特に預金残高の少ない低所得層)には当座貸し越しやNSFによる引き落とし不能手数料が発生する。アメリカ人の半数は貯蓄額が500ドル未満とされている。
アメリカには、主に個人間送金向けに銀行などが提供する即時決済サービスのゼル(Zelle)もある。こちらは基本的に手数料無料だが、いざというときの補償が薄い。別の口座への誤送金や詐欺による送金は、基本的に返金されない。
上院の調査によると、4行に対して21~22年前半に詐欺的手法でゼルの送金システムに誘導されたという顧客の申し立てが19万件以上あり、被害総額は2億1300万ドルを超えたと報告。データを全面開示した3行では、詐欺被害の申告総額290万ドルのうち顧客に返金されたのは9.6%にすぎないという。
バンカメの最高技術情報責任者ハリ・ゴパルクリシュナンは本誌に対し、同行の一般消費者向け取引の99%がデジタルかつ完全自動化されていると説明。現在はFedNowとの連携を進めており、「適切な時期に」導入する体制が整うと語った。
同行はゼルの問題にも対処してきたという。「今では顧客が正しい操作を行い、正しい相手に送金していることを確認するための仕組みが多数導入されている。詐欺や不正行為を検知する分析モデルやAI(人工知能)への多額の投資も行われている。業界全体で詐欺防止に向けた全面的な取り組みを推進中だ」
同行では今後も投資を継続する予定だ。「AIの進歩に対応して、詐欺の手口も高度化する。絶えず改善を重ねる必要がある」
【note限定公開記事】アメリカで即時決済が進まない理由
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