こうした待遇は、広告やゲームで稼ぐ親会社の経営基盤の厚さだけでなく、新設スタジオが老舗大手スタジオに対抗して優秀な人材を獲得する戦略でもある。東映アニメーションやソニーグループが他業界にも見劣りしない待遇を打ち出すなか「さらにその上を」と考えたのだろう。
賃金上昇は、昨今のアニメ人気の盛況を反映している。制作ニーズが増す一方、不足する制作スタッフの奪い合いが起きている。就業環境が改善されつつあるのは明るい兆しだが、これでアニメ業界の課題が全て解決すると考えるのは時期尚早だ。
問題は賃金上昇が、業界内でかなり偏っていること。実力派アニメーターや社内スタッフの状況は改善しているが、依然、フリーランスとして厳しい条件で働くスタッフも多い。
社内スタッフを抱えるのは一部大手で、中小スタジオは教育のための人材もシステムもない。待遇改善には原資が必要だが、スタジオ経営は厳しい。アニメ制作予算は高騰を続けるが、スタジオの家賃、制作ツールのライセンス費用、人材コストの上昇などがそれを上回る。スタジオは赤字体質から抜け出せず、待遇改善や人材育成にまで進めない。
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