<体調の悪い人に勝手にケアキットを送り、マーケティングを大成功させた企業がある。どうすれば「驚き」をうまく活用できるのか。脳科学が解き明かす、顧客に忘れられないためのビジネス戦略>
驚き、斬新さ、感情、文脈といった15の変数をうまく組み合わせて使えば、「あなたについての記憶は相手の心に残り、狙い通りの行動が引き出されるだろう」と、認知科学者のカーメン・サイモンは言う。
ここでは本書から一部を抜粋し、4回に分けて転載する。第3回は「第5章 驚きのパラドックス――さらなる注目・時間・関与を獲得する代価」から、15の変数の1つである「驚き」について。驚きはなぜ行動と結びつくのだろうか。
※第1回:謎の大富豪が「裸の美術館」をタスマニアに造った理由
※第2回:顧客に記憶させ、消費行動を取らせるための15の変数
ただし驚きに対しては、常に寛大で好意的な反応が返ってくるわけではない。
1970年代、駐米ルーマニア大使のコルネリウ・ボグダンは、アメリカとルーマニアが対戦するテニスのデビス・カップを観戦するため、ノースカロライナ州シャーロットを訪れて、まったくべつのサプライズに直面した。少人数の軍楽隊が間違って、共産主義国家になる以前の王国時代の国歌を演奏し始めたのだ。驚いたのなんの! ルーマニア大使はショックを受けた。これよりも小さな災難に巻き込まれた部下に対し、チャウシェスク大統領[訳注:独裁的権力者として君臨していた]は残酷な態度で臨んでいたのである。幸い音楽はすぐに中断され、主催者はべつの行事に切り換えてから、今度は正しい国歌で開会式をやり直した。