Maki Shiraki
[東京 31日 ロイター] - 28日に発生した熊本地震の影響が、再び自動車のサプライチェーン(供給網)を脅かしている。10年前の地震で長期間、生産が止まったアイシン九州(熊本市南区)の工場が今回も被災。業界関係者によると、他の部品メーカー、その二次、三次の仕入先の供給に支障が出ている。多階層に及ぶ自動車生産のぜい弱な構造が改めて浮き彫りになった。
アイシンは30日、ドアやエンジン関連部品などを手がける連結子会社アイシン九州の工場が翌日から生産再開の準備を始めると明らかにした。同工場は28日の地震発生直後から稼働できずにいる。生産設備の復旧を進め、安全性と品質を確認できたラインから生産を順次再開するとしているが、現時点で本格的な生産再開の時期のめどは立っていない。
アイシンの広報担当者は「他拠点で生産している互換品の活用や代替生産を視野に入れ、できるだけ顧客への影響を抑えられるよう対応していく」としている。
同工場は、2016年4月の熊本地震でも、前震が起きた14日と本震が発生した16日の2度にわたる大地震で壊滅的な被害を受けた。「ドアチェック」と呼ばれる自動車部品の供給が約4カ月間途絶え、自動車生産の混乱を招いた。ドアチェックは、ドアが急に開き過ぎたり勝手に閉まったりするのを防ぐ部品で、アイシンは当時、月90万本以上を生産していた。
自動車業界のアナリストらによると、トヨタ自動車の国内生産車の約9割にアイシン製のドアチェックが使われており、この部品がボトルネックの1つとなり、トヨタは全国各地の車両組み立て工場の大半で生産停止に追い込まれた。
アイシン九州が生産する自動車の部品は、トヨタのほか、グループ会社のダイハツ工業、さらに日産自動車などにも納入されている。
アイシン九州だけではない。ある自動車メーカーの幹部によると、直接取引のある部品メーカー、そうしたメーカーに部品や素材を納める熊本の中小企業が地震の影響を受けているもようで、「ティア1(一次仕入先)に部品を納めるティア2(二次仕入先)、ティア3(三次仕入先)などの企業からの供給遅延があるようだ」と話す。
<トヨタは福岡県内3工場の稼働停止>
九州には自動車産業が集積している。今回の熊本地震でも、トヨタは福岡県内の3工場の稼働を28日に停止。29日朝にいったん再開したが、仕入先の状況を踏まえて再び停止を決めた。停止は31日夜勤まで続く。
中国地方の工場も、九州のサプライヤーから部品を調達しており、影響が及んでいる。三菱自動車は、一部サプライヤーの被災で部品調達に支障が生じているとして、30日夜勤から水島製作所(岡山県倉敷市)で一部車種の生産を停止する。2016年の熊本地震では、三菱自はアイシンからエンジン部品を調達していたため、同製作所での軽自動車生産を一時休止した。
ダイハツも、軽自動車を生産する中津工場(大分県中津市)の操業を29日夜勤から31日夜勤まで停止。また、エンジンを生産する久留米工場(福岡県久留米市)についても、30日昼勤から31日夜勤まで操業を停止する。仕入先や物流の状況を踏まえた措置で、来週以降の稼働については部品調達の状況を見極めた上で、あらためて判断する。
前出の自動車メーカー幹部は、部品は人命に関わる製品であり、変更には極めて厳格な安全・品質面の認証手続きが必要になるとして「そう簡単にすぐ(代替品に)変えられるものではない」と語った。同幹部は、これまでの度重なる震災で取引先が被災した教訓から調達先の分散化は進めてきていると説明。その一方で、「ティア2やティア3など、サプライチェーンのティアの深い層に至るまでは分散できていない部品があるのも事実だ」と話した。
日産も地震による部品供給の遅れを理由に、日産自動車九州(福岡県苅田町)と日産車体九州(同)で一部の生産を今週、停止している。週明けの8月3日以降の稼働については、状況を見て判断する。日産関係者によると、一部の車種ではシート関連部品などの供給に遅れが出ているという。
(白木真紀 編集:久保信博)