中国家電大手の美的集団<000333.SZ>が独産業用ロボット大手クーカに対して行った50億ドル規模の買収提案によって、メルケル独首相はジレンマに直面している。

 美的がクーカを買収すればドイツが優位にある最先端技術が移転されることになるが、自由貿易を掲げるメルケル首相にとって買収計画への干渉は難しいためだ。

 首相は「インダストリアル・インターネット」と呼ばれる国内のイノベーションを支持しているほか、首相率いる連立政権は産業のデジタル化「インダストリー4.0(第4次産業革命)」を経済戦略の中核に位置付けている。

 メルカトル・インスティテュート・フォー・チャイナ・スタディーズ(ベルリン)のアナリスト、ミッコ・フオタリ氏は「政府は(産業面での)リーダーシップをどうすれば維持できるのかについて懸念していると思うが、これまでのところ、このリーダーシップを守るためのアプローチはみられない。こうしたやり方はドイツの産業政策ではないからだ」と指摘。「戦略的な思考が働くのかもしれないが、中国資本であれ、ドイツに流入する資本にドイツ政府が開放的であり続けることは明白だ」と述べた。

 18日に発表された美的による買収提案は、クーカの評価額を約45億ユーロ(50億5000万ドル)としている。

 メルケル首相はこれまでのところ、この買収提案に対して公にコメントしていない。

 ドイツ下院与党会派のミヒャエル・フックス副議長は、買収提案が発表された直後、政府として買収を阻止するために介入する意図はないと明らかにした。

 ただ、複数の政府筋によると、ドイツ政府はクーカの技術が「インダストリー4.0」にとってどれほど重要なのかを精査する方針だ。

「インダストリー4.0」のモデル企業

 メルケル首相は2015年3月にバイエルン州アウクスブルクのクーカ工場を訪れ、同社を独産業界の未来のモデルだと称賛したことがある。

 首相は当時、「ここは『インダストリー4.0』に向けたドイツ製造業界の胸躍る実例だ」と指摘。「われわれは常に先端に居続けることを望むならこれをさらに発展させなければならない」と述べた。