『エクス・マキナ』には不安な時代ならではの深い不安がにじむ。自分が実験に利用されていることにケイレブが気付くくだりは、フェイスブックが無断でユーザーの投稿を操作して心理学の実験を行い、非難を浴びた事件を連想させる。

 ネイサンはAIが人類の能力を超える日を待ち焦がれている。「いつの日かAIは、私たちが化石を見るような目で人類を見るだろう」と、彼はケイレブに予言する。

 そんな日が来るのはまだ先の話だろう。ユーザーの質問に答える秘書アプリのSiri(シリ)は今や日常の一部だが、エバのようなAIを作るのは夢のまた夢だとガーランドも認めている。

 それでも映画界ではAIが人気。スカーレット・ヨハンソンがAIの声を演じた『her/世界でひとつの彼女』(13年)はアカデミー賞脚本賞を受賞した。ヨハンソンは14年の『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』でも行きずりの男を誘惑する「人間ではない女」に扮している。

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『エクス・マキナ』はその流れに乗る一方で、人工的な人間を作る実験の恐怖を描く映画の系譜にも連なる。古くはジョン・フランケンハイマー監督の『セコンド/アーサー・ハミルトンからトニー・ウィルソンへの転身』(66年)、最近では外科医が完璧な皮膚を作ろうとするペドロ・アルモドバル作品『私が、生きる肌』(11年)がある。

 もっとも『エクス・マキナ』の天才プログラマー、ネイサンはグーグルやフェイスブックのようなIT帝国の経営者だから、キャラクターとしてはぐっと現代的。今や――SFではなく現実の――世界を支配するのは彼らのような人々なのだ。

【映画情報】
EX MACHINA

『エクス・マキナ』


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監督/アレックス・ガーランド

主演/ドーナル・グリーソン

   アリシア・ビキャンデル

日本公開は6月11日