<石油依存からの脱却を目指して推進した、観光とビジネスのハブ化は大成功。超高級車が走り回り、個性的な建造物が林立するラグジュアリーな国際都市の裏側にある、移民労働者が担う過酷な労働や、世界最大級の環境負荷という課題>

世界最高の観光地は、パリでもニューヨークでもない。オンライン旅行会社トリップアドバイザーが発表する人気の旅行先で、3年連続世界一に輝いているのがアラブ首長国連邦(UAE)のドバイだ。石油ブームの波に乗ってドバイは繁栄を謳歌し、不動産価格爆上がりの時代に突入。ほんの数十年で砂漠の小さな漁村は観光とビジネスの世界的ハブに成長し、メガロポリスへと変貌を遂げた。

世界最高層ビルを擁する摩天楼、世界最大のショッピングモール、人工島、ラグジュアリーな空間に体験・・・ドバイは現代の野望と贅沢の象徴と化し、旅行者にとっての絶好のフォトスポットになった。

一方で、政府批判や不都合な真実は徹底して封じ込められる。移民は低賃金で過酷な労働を強いられ、脱塩処理した淡水と大量の電力と埋め立て頼みでの急成長は、環境に途方もない負荷をかけている。観光地ドバイは、完璧に演出された舞台。だがその裏側に目を凝らせば、不条理な幻想や犠牲が浮かび上がる。

建設現場で休憩中に撮影に応じるインド出身の移民労働者。2008年にUAEに移住し、故郷の家族に定期的に仕送りをしているという。UAEの住人の大半は外国籍で、インド出身者は350万人を占める
建設現場で休憩中に撮影に応じるインド出身の移民労働者。2008年にUAEに移住し、故郷の家族に定期的に仕送りをしているという。UAEの住人の大半は外国籍で、インド出身者は350万人を占める

Photographs by Ingmar Björn Nolting-DOCKS

撮影:イングマール・ビョルン・ノルティング

1995年生まれ。ドイツのドルトムント応用科学芸術大学で、写真学の修士号を取得。ライプチヒを拠点に活動する写真家。過度に表現しない舞台のようなスタイルの写真を通じて、環境、政治、社会動態の複雑な相互関係を表現する。米ニューヨーク・タイムズの定期的寄稿者

次ページ:作品の紹介

 【連載21周年】 Newsweek日本版 写真で世界を伝える「Picture Power」

    2025年7月8日号掲載

「AIに使われるか、AIを従えるか」 一橋大学が問う、エージェント時代の「次世代エグゼクティブ」の条件
「AIに使われるか、AIを従えるか」 一橋大学が問う、エージェント時代の「次世代エグゼクティブ」の条件
【写真特集】世界一の観光地ドバイ 旅行者を魅了するメガロポリスの不都合な裏側
【関連記事】