強制が裏目に出ることも

脳の成長に重要な鉄分と脂肪も、十分に摂取するのが難しい。植物性食品に含まれる鉄分は非ヘム鉄といい、肉や魚に含まれるヘム鉄よりも身体に吸収されにくい。鉄欠乏性貧血の子供は、長期にわたり知能や情緒の発達障害を負いかねないとする研究もある。

またビーガンの子供は脂肪も不足しがち。青魚などに多く含まれるオメガ3脂肪酸も、脳の発達には重要だ。

最後にカルシウムとビタミンD(アメリカ人はカルシウムの70%以上を乳製品から取る)。幼児期にカルシウムとビタミンDが不足すると骨密度が低下し、生涯の骨折リスクが高くなる。

前出の14年の研究によれば、ビーガンは肉食に比べ、カルシウム摂取量が40%少ない。さらに緑黄色野菜などに含まれるシュウ酸は、カルシウムの吸収を妨げるから厄介だ。

そもそも特定の食品を禁じること自体にも問題がある。子供が自分の意思でビーガンになるならいいが、強制されれば子供は禁断の食べ物に憧れ、親の目を盗んで(しかも大量に)食べるかもしれない。

07年にオランダ・マーストリヒト大学の研究者がこんな実験を行った。5~6歳の子供の前に黄色い菓子が入った皿と赤い菓子の皿を置き、黄色い菓子は好きに食べていいが、赤は食べてはいけないと言い渡した。

その後、どちらも好きなだけ食べていいと言うと、赤い菓子を禁じられていた子供は赤い菓子を集中的に食べた。一方、どちらも好きに食べなさいと言われていた別の子供たちは、赤も黄色も同じくらい食べた。面白いことに、親が厳しく食事を制限している子供は、それほど厳しくない親の子供よりも菓子を多く食べた。

それも無理はない。糖質制限ダイエットの経験者なら分かるはずだ。ダイエットが終わって真っ先に手が伸びるのはドーナツ──それも1つでは済まない。

ビーガンで健康な体は作れるのか。もちろんだ。野菜と果物と全粒粉は育ち盛りの体にいいし、完全菜食は癌のリスクを減らすという研究もある。

ただし摂取カロリーや栄養バランスを、保護者はしっかり確かめる必要がある。また、押し付けは逆効果かもしれない。ダメと言われるものほど、子供は食べたがる。スカンジナビア・スクールの園児だって、こっそりチーズを食べているかも。

(c)2017 Slate