<「核のボタン」を押すのは誰なのか――。その決断を担うのが不完全な人間である現実を、キャスリン・ビグロー監督は徹底したリアリズムで描く>

<記事前半:18分で世界が終わる――アカデミー賞監督が描く核攻撃の恐怖と沈黙の代償

人間らしい温度が生まれる

だが、観客が問題を本当に理解した上で引き受けるには、その重みをしっかり感じ取る必要がある。そのためにビグロー側は、二面的な要素を取り入れなければならなかった。

1つは、徹底した正確さを追求する姿勢。もう1つは、混乱の中で壊れやすい人間性を描く瞬間だ。そのはざまに『ハウス・オブ・ダイナマイト』の最も恐ろしい真実が浮かび上がる──私たちを守るべき政府の組織と手続きが緻密に設計されていたとしても、その任務を担う人々は私たちと同じ人間ということだ。

完璧な仕組みの中核にいる不完全な人間を描く前に、まずビグローは現実感のある世界をつくり上げなくてはならなかった。リアリティーへの執念は彼女の作品の特徴だ。それは芸術的なこだわりであると同時に、テーマと観客の両方に対する責任でもある。

「観客を『現場』に連れて行くからには、責任を持たなくてはならない」と、ビグローは言う。そこで彼女が現場に招いたのが、元米陸軍中将のダニエル・カーブラーをはじめとする軍事考証チームだった。

米陸軍宇宙・ミサイル防衛司令部の司令官を務めたカーブラーは、ビグローの姿勢に太鼓判を押す。「これまで山ほど軍事ものの映画を見てきたが、どれも『こんなの、あり得ないだろ!』と突っ込みたくなるものばかり。でもこの作品には、その手のミスが全くないはずだ」

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核の問題は人間的なもの
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