日米両政府が28日に公表した「日米間の投資に関する共同ファクトシート」には、関税合意に基づく5500億ドル(約83兆円)の対米投資「候補」となる日米企業名が並んだ。具体的な企業名の公表に踏み込むことで、日本政府は合意を誠実に履行する姿勢を米国側にアピールする考えだ。

ただ、公表が「候補」にとどまった背景には、政府の意向と企業側の事情が必ずしも一致していない実情も見え隠れする。米国側は第1号案件を年内にも選定したい考えだが、今回のトランプ米大統領来日がどこまで企業の背中を押すかは不透明だ。

時間切れ

「何か文書を出さないと米国との関係がもたなかった」。高市早苗首相とトランプ氏による日米首脳会談が開かれた28日、日本政府関係者はファクトシートの発出に至った理由を自嘲気味に語った。

日本政府は7月の関税合意以降、対米投資を実施できそうな企業への働きかけを強めてきた。交渉に携わった内閣官房幹部は「トランプ氏の来日に合わせて第1号案件を発表できれば一番いい」と意気込んだ。実際、手を挙げる企業も現れ始め、中心となって取り仕切る経済産業省幹部は「モノになりそうな案件が集まってきている」とも期待していた。

ただ、結果的に第1号案件の選定は「時間切れ」となった。トランプ氏が満足する規模や内容のプロジェクトでなければならなかったことや、投資のスキームが複雑で企業側がリスク判断に時間を要したことなどのハードルがあったからだ。前出の内閣官房幹部は「収益性の高い投資であれば企業は政府が呼びかけなくても自らやる。わざわざ複雑なスキームを使うメリットをどう打ち出せるかが難しかった」とも語った。

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