環境にも優しい「作物」?
研究チームによれば、微細藻類にはフィトエンだけでなく健康にいい油やタンパク質などさまざまな栄養素が含まれている。
そればかりか「人口増と気候変動によって十分な量の植物性食料を生産することが困難になりつつあるなかで、海や川、湖で育つ藻類はその代替品になり得る」とエスクラは言う。農地を必要とせず、短期間で育つ藻類は、非常に栄養豊かで持続可能性の高い作物として期待できるというわけだ。
フィトエンはカロテノイドという主にオレンジ色の食品に含まれる栄養素の一種だ。カロテノイドはヒトの体内でビタミンAに変化し、癌や心臓病、皮膚や目の病気、代謝異常などのリスクを下げるといったさまざまな健康効果と関連があるとされている。にもかかわらず、これまで栄養学的見地からのフィトエンの研究は進んでいなかった。たいした健康効果はないだろう、と思われてきたからだ。
例えばトマトの健康効果に関する研究では、既に心臓病や癌のリスクの低減との関連が確認されている。だが、これはリコピンというカロテノイドの効果とされ、フィトエン(トマトには豊富に含まれる)が何らかの役割を果たしている可能性については、ほとんど調べられてこなかった。
「植物がつくり出す食物繊維やビタミンの健康効果については従来から大いに注目されてきたが、最近では食物繊維やビタミンに限らず、植物はヒトの健康に影響を与える数多くの物質を生成していることが分かってきた」とエスクラは言う。
【参考文献】
Morón-Ortiz, Á., Karamalegkos, A. A., Mapelli-Brahm, P., Ezcurra, M., Meléndez-Martínez, A. J. (2024). Phytoene and Phytoene-Rich Microalgae Extracts Extend Lifespan in C. elegans and Protect against Amyloid-β Toxicity in an Alzheimer's Disease Model, Antioxidants 13(8).
Sun, J., Aballay, A., Singh, V. (2016). Cellular Responses to Infections in Caenorhabditis elegans, Encyclopedia of Cell Biology 2.
Hampel, H., Hardy, J., Blennow, K., Chen, C., Perry, G., Kim, S. H., Villemagne, V. L., Aisen, P., Vendruscolo, M., Iwatsubo, T., Masters, C. L., Cho, M., Lannfelt, L., Cummings, J. L., Vergallo, A. (2021). The Amyloid-β Pathway in Alzheimer's Disease, Molecular Psychiatry 26, 5481-5503.
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