空き家を「壊す」だけでなく、未来につなげるため「価値創造」を目指す

このような地域再生の循環モデルは、SDGsの視点からも重要な意義を持つ。目標11「住み続けられるまちづくりを」では、防災・景観・治安の改善に直接貢献。2025年からは耐震相談を無料で開始し、築年数の古い住宅の安全性向上に取り組んでいる。

さらに目標8「働きがいも経済成長も」においては、業界の3Kイメージを打破すべく、未経験者の育成やアスリートのセカンドキャリア支援を積極的に行った。現役・元アスリートが持つ高い目標達成力とチーム力は、現場に新たな価値をもたらしている。

こうした取り組みは、制度や表面的な改革にとどまらない。田宮氏が繰り返し語るのは「人の想いを受け止める企業でありたい」ということだ。どんなにAIや制度が整っても、空き家には人の感情が絡んでいる。

だからこそ、タミヤホームは「話を聞く」こと、「一緒に悩む」こと、「選択肢を提案する」ことを徹底する。LINEを活用したAIコンシェルジュの開発や、無料相談会の開催など、デジタルとリアルの両軸で相談窓口を広げているのもそのためだ。

課題は、個人顧客への認知拡大。現在の依頼は法人が中心だが、「誰に相談すればいいか分からない個人」の声に応えることこそが、真の空き家解消につながる。タミヤホームでは今後、社員数の増強やアスリートネットワークの活用を通じ、認知拡大に取り組む方針だ。

2035年には年間解体件数1万件を、2040年には子ども支援プロジェクトの本格展開を目指す。

タミヤホームの生み出す循環
タミヤホームは、未来の子供たちの笑顔につながる循環を生み出している

「壊すことで、つなげる未来がある」――そう信じ、地域と向き合い続けるタミヤホームの挑戦は、空き家問題を単なる「撤去」ではなく、「価値創造」へと昇華させている。

こうした思いを持つ同社の取り組みが広がれば、空き家問題は最早「問題」ですらなくなるかもしれない。

◇ ◇ ◇

アンケート

どの企業も試行錯誤しながら、SDGsの取り組みをより良いものに発展させようとしています。今回の記事で取り上げた事例について、感想などありましたら下記よりお寄せください。

アンケートはこちら

ニューズウィーク日本版 台湾有事の新シナリオ
2026年4月21号(4月14日発売)は「台湾有事の新シナリオ」特集。

米・イラン戦争で変わる地域紛争の「大前提」/石油危機を恐れるべき理由

※バックナンバーが読み放題となる 定期購読はこちら
※画像をクリックするとアマゾンに飛びます