「呼吸域での大気中のナノ粒子の濃度は、最大で1立方センチメートルあたり100億個に達しました。これは、交通量の多い高速道路に立っている際に遭遇するレベルに匹敵します。

ただし、この数値は空中での濃度を示しており、実際に吸い込まれる量は、呼吸の深さや近さ、換気状況、温度や製品の種類、使用時間によって異なります」

また、髪のスタイリングは顔の近くで行われるが、洗面所など換気の悪い空間であることが多いため、実際の吸入量も相当になる可能性があるという。

隠れた有害成分

これまでの先行研究でも、加熱によってヘアケア製品から有害な化学物質が放出されることが確認されている。とりわけ注目されているのは、ヘアスプレーやヘアクリーム、髪用美容液などに使用される「シクロペンタシロキサン」という成分だ。ジョン教授は次のように述べる。

「加熱時の排出物を初めて測定した際にも、すでに揮発性の化学物質が放出されていることを確認しており、非常に懸念していました。さらに詳しく調べてみると、1立方センチメートルあたり1万〜10万個のナノ粒子を放出していたことが判明しました」

シクロペンタシロキサンは、製品をなめらかにするなど安定させる目的で広く使用されているが、「非常に持続性が高く、生物蓄積性も高い」として、欧州化学機関(ECHA)は一部の化粧品への使用を制限している。

シクロペンタシロキサンは動物実験で呼吸器や肝臓、神経系に悪影響を与える可能性が示されており、加熱されると多量のナノ粒子が発生して肺の奥深くまで到達するが、その健康リスクはいまだ十分に解明されていないとジョン教授は述べる。

リスクを減らすには
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