コンクールで優勝する晴れ姿を娘に見せられないなら、せめてスケートの腕前を見せておきたいということなのか。アルムートは氷上を滑り出す。アクセルの1つも決めるのかと思ったら、ただぐんぐん滑っていって振り返り、夫と娘に手を振る。

これが最後の姿となる。闘病でやつれた姿は見せず、娘の記憶に残りそうな見せ場もない。「死んだママ」でこそないものの、「手を振るママ」として退場する。

その後、アルムートの死が暗示される。ラストシーンではトビアスとエラが、アルムートに教わったやり方で卵を割っている。レガシーというには、いささか寂しい。

全てを手に入れようとして、アルムートは死んだ。映画もお決まりの悲恋ものから脱しようとして現代性と伝統、笑いと悲劇など多くの要素を詰め込み、中途半端に終わった。

理想の恋を夢見る人を「救い難いロマンチスト」と呼ぶが、このロマンス映画は抱いた夢が大きすぎた。

©2025 The Slate Group

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We Live in Time この時を生きて

監督╱ジョン・クローリー

主演╱フローレンス・ピュー、アンドリュー・ガーフィールド

日本公開は6月6日

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