ハリウッドのアニメーターたちは過去30年間のほとんどを、毛穴の一つ一つに至るまで精細に描き出す自社のCGソフトウエアの性能を誇示することに費やしてきた。

だが『Flow』は、オープンソースのソフトウエア「ブレンダー(Blender)」を使って作られており、動物の毛並みは水彩絵具で描いた光と影の揺らめきのように表現されている。

背景は印象派が描いた風景画のようだ。必ずしもリアルに描かれてはいないのに、とてもリアルに思えるという点で、スタジオジブリの世界を彷彿させる。

フォトリアリズム志向のアニメ作品に慣れた観客の目には、『Flow』は粗削りで安っぽく見えるかもしれない。だがシンプルであるが故の美もあれば、親しみやすさもある。

物語がはっきりと言葉で語られるわけではない上に、キャラクターが過剰に擬人化されてもいないため、作品に入り込むには観客の側から主体的に感情移入したり想像力を働かせることが必要になる。作品のほうから歩み寄ってはこないので、見る側がつながりをつくる必要があるのだ。

だがそうしてできた作品とのつながりは、パーソナルで親密なものとなる。作中の世界は時として、自然そのものと同じように厳しい。ネコには命が1つしかなく、それを守れる保証もないということを、この映画は常に突き付けてくる。だからこそ、心動かされる場面が尊く思えるのだ。

人懐っこくはないかも?
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