『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない(No Other Land)』場面写真
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撮影期間中、住居破壊活動を警護するイスラエル軍兵士は、カメラを向けられることへの反感をどんどんむき出しにしていくように見える。罵声を浴びせたり、カメラを地面にたたき落としたりもする。

「感動」で終わらせるな

もっとも、撮影は脅威ではないと、彼らはある時点で判断したようだ。注目する者はいないのだから。「記事にしろ」と、兵士の1人は嘲る。「動画を作成すればいい」

本作をめぐる出来事は、そうした冷笑的見方の裏付けかもしれない。

昨年2月のベルリン国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞した際、アドラーと共に登壇したアブラハームは、イスラエルによる「アパルトヘイト(人種隔離政策)」を終わらせるよう呼びかけ、反ユダヤ的だとベルリン市長に非難された。

同映画祭でのプレミア上映から1年後の今も、本作はアメリカでの配給会社が決まっていない。アカデミー賞候補作としては、珍しいことだ。ドキュメンタリー映画市場では多くの良作が日の目を見ないままとはいえ、政治的事情が理由でないとは思えない。

トランプは、親パレスチナの抗議活動に参加する外国人学生は「ハマス支持者」として国外退去させる方針だ。これは非人間化の手法であり、ガザを「中東のリビエラ」にすべく、アラブ系住民全員を強制移住させる暴挙への一歩だ。

こんな状況で、マサーフェル・ヤッタの住民の人間らしい姿を捉えようとする作品に、誰が肩入れするだろう?

「感動」の後に何が残る?
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