<「一帯一路」は実は外交的野心ではなく、中国国内の「供給サイドの改革」とほぼ同時期に打ち出された経済政策だった。ではなぜ、長く続かなかったのか>

*本稿は、『幸福な監視国家・中国』で知られる気鋭の経済学者とジャーナリストが、世界を翻弄する中国の「宿痾」を解き明かした新刊『ピークアウトする中国――「殺到する経済」と「合理的バブル」の限界』(文春新書)より、一部を抜粋、加筆・編集したものです。

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中国の一帯一路政策は有名だ。アジアとヨーロッパを陸路と海上航路でつなぐルートを作り、貿易を活発化させて経済成長を目指すという構想だが、国際的地位と軍事的プレゼンスの向上という中国の野心のあらわれとして解釈されることも多い。だが実際には、当初から生産能力過剰を抱える中国国内の経済対策という側面が強かった。

中国は強大すぎるインフラ建設能力を持つ。空港や港、高速道路、そして不動産と中国国内に作りまくってきた。それが必要だった間はいいのだが、もう十分だ、これ以上作っても無駄になるだけとなると困ったことになる。

海外への輸出は一つの解決策だが、急拡大させれば貿易摩擦につながる。そこで貿易摩擦を生み出さない海外での需要創出策として考案されたのが、「一帯一路」に代表される積極的な対外援助であった。

途上国を使った過剰生産の解消手段

中国政府は、経済が「新常態(ニューノーマル)」と呼ばれる安定的な成長段階に入ったと主張するようになった。その対応として、市場メカニズムを重視した改革の継続、投資に過度に依存した成長路線からの転換、いわゆる「供給サイドの改革」がさかんに説かれるようになった。

中国国内では消費しきれない過剰な生産物は海外に輸出する必要がある。だが、先進国に輸出すると貿易摩擦が起きる。新興国、途上国向けならば問題はないが、彼らには金がない。そこで中国が融資して、その資金で中国のインフラ建設プロジェクトを行うという方策が編み出された。これが「一帯一路」だ。「供給サイドの改革」と「一帯一路」がほぼ同時期に打ち出されたのは偶然ではない。

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過剰な国内資本や外貨準備を海外に「逃がす」ことが目的
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