MSKの乳腺腫瘍科医ニール・アイエンガー
MSKのアイエンガー(写真中央)らは癌患者との話し合いを通じて生活習慣の改善を目指すプログラムを推進中 COURTESY OF MEMORIAL SLOAN KETTERING

アメリカの多くの医療機関が、病気になってからではなく、なる前に手を打つ予防医療に重点を移しつつある。これは医療コストを抑えつつ患者の症状や生活の質の改善を重視する「価値に基づく医療(value-based care, VBC)」と呼ばれる新しいアプローチだ。

癌は予防効果が高い疾患だから、予防医療に軸足を移すなら癌から始めるのが得策だろう。だが問題は「予防に取り組んでも収益につながらない」ことだとラトナーは語った。

本誌は独自に行った最新の格付けで全米トップの癌専門病院と判断した2つの病院、テキサス大学MDアンダーソン癌センターとMSKの専門家たちに話を聞き、専門性の高い医療機関が予防医療にどう取り組んでいるかを探った。

これはなかなか厄介な課題だ。MDアンダーソンはテキサス州、アメリカ、さらには世界から癌をなくすことを使命としているが、癌がなくなればMDアンダーソンは存続を脅かされる。

それでも、経営者のピーター・ピスターズは、MDアンダーソンを「予防機関」にしたいと考えている。「癌がなくなって廃業に追い込まれるなら、それが本望だ」というのだ。そのためには一般の人々と保険会社など医療費の支払者の意識が大きく変わる必要がある。

予防的な「臓器の摘出」に踏み切る人も
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