一方で新しい規制は、子供のメンタルヘルスへの影響を懸念して対策を講じようとするソーシャルメディア事業者を助けるかもしれない。規制がない現状では、子供にアカウントを作成させないことを徹底するソーシャルメディアは、ライバルとの競争で不利な状況に甘んじているからだ。
オーストラリアの憲法には人権に関する体系的な規定がなく、裁判所は立法府の判断を尊重する傾向がある。しかし最高裁判所はこれまで、憲法の規定に照らすと、政治的コミュニケーションを不当に制約する立法は許されないとの判断を示している。
新しい法律が憲法に違反しているという指摘に対しては、16歳未満の子供には選挙権がなく、政治的コミュニケーションの必要性が比較的小さいとか、ソーシャルメディアの弊害は極めて大きく、軽度な年齢制限であれば過剰な規制とは言えないと主張できるかもしれない。政治的コミュニケーションに特化したソーシャルメディアを規制の対象外にするという方法もあり得る。しかしそのためには、どのコミュニケーションが政治的コミュニケーションに該当するかを判断するという難しい課題がついて回る。
ピーター・シンガーPETER SINGER
プリンストン大学教授(生命倫理学)。著書『動物の解放』(1975年)で注目を集めた。NPO団体The Life You Can Save(あなたが救える命)創設者。オーストラリア出身。
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