『銃・病原菌・鉄』の発想が研究のモチベーションに

──最後に、古屋さんの人生観や発想に影響を与えた本についてお聞かせください。

好きなのは進化生物学者ジャレド・ダイアモンドの著作です。中でも10年ほど前に読んだ『銃・病原菌・鉄』には大きな影響を受けているかもしれません。15~16世紀にヨーロッパ人がアステカ帝国やインカ帝国のネイティブアメリカンに圧勝したのは、ヨーロッパ人が優れていたからではない。こうした違いを生んだのは「土地」だと著者はいいます。病原菌に関していうと、人口密度が高くなりやすいヨーロッパの土地が病原菌の遺伝子変異の回数を増やして強い病原菌をつくり、それが持ち込まれたインカ帝国などでは、その免疫のなかった人々を死に追いやった。つまり、人は生まれもった能力の差ではなく環境に左右される。この発想が私の研究の土台にあるかもしれません。

また、同氏の『危機と人類』では、クライシス、つまり日本語の「危機」という単語のダブルミーニングについてふれられています。「危機」の漢字には、「危ない」と「機会(チャンス)」の両方の意味が込められていて、この言葉の真意をよく表しているというのです。これは、日本社会が多くの社会課題にどう向き合っていくかのヒントとなる言葉でした。

この2冊をはじめ、同氏から受けた影響は大きいものでした。特に『銃・病原菌・鉄』は「環境を変えることで人が力を発揮して幸せになれる」という、人間の可能性を認識させてくれる本です。

──『銃・病原菌・鉄』をぜひ再読したいと思います。貴重なお話をありがとうございました!

ゆるい職場

 著者:古屋星斗

 出版社:中央公論新社

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なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか

 著者:古屋星斗

 出版社:日本経済新聞出版

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古屋星斗(ふるや しょうと)

リクルートワークス研究所主任研究員

一橋大学大学院社会学研究科総合社会科学専攻修了後、経済産業省入省。産業人材政策、福島復興、成長職略立案などに携わる。2017年より現職。労働市場や次世代のキャリア形成研究を専門とする。著書に『ゆるい職場─若者の不安の知られざる理由』(中央公論新社)など。

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flier編集部

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