『ビートルズ '64』
アメリカ滞在中のポール。『ビートルズ '64』より ©2024 Apple Corps, Ltd. All Rights Reserved.

ポールはトランジスタラジオを持ち歩き、自分たちに関する報道をリアルタイムで追う。ニューヨークのプラザホテルに彼らの車が着いた途端にマイクに向かってしゃべり出すリポーターの姿など、自分たちをスターに仕立てる巧みな演出も見逃さない。

4人は誰もがアメリカ文化の徹底した商業主義に驚いている様子だ。ポールは、真面目なニュースを伝えていたニュースキャスターがさらっと「スポンサーからのお知らせ」に移る様子をまねてみせる。ジョン・レノンとジョージ・ハリスンは即興でマルボロのCMを演じてみせる。

メイズルズ兄弟としては、自分たちの存在が気付かれそうな場面は隠しておきたかったに違いない。しかしビートルズの部屋に忍び込みたい2人の女性がメイズルズ兄弟に協力を求めたときのやりとりなどは実に楽しい。

歴史的新発見はないが

『ビートルズ '64』
アメリカ滞在中のリンゴ。『ビートルズ '64』より ©2024 Apple Corps, Ltd. All Rights Reserved.

メイズルズ兄弟が撮影し、お蔵入りになっていた貴重なインタビュー映像もある。例えば、ハーレムに住む黒人たちにビートルズについての感想を聞く場面だ。

2人の女子はせいぜい「OK」と言い、少し年上の女性は「あの髪形」が好きだと言う(ただし彼らの歌は「ナイス」な程度だとか)。

マイルス・デイビスやジョン・コルトレーンに傾倒している20代の男性は「気持ち悪い」と言い、スカーフとオーバーコートに身を包んだ別の男性は「ベリー・ナイス」と言いつつも、「僕はオリジナルなものなら何でも好きだから」と付け加える。

歴史を書き換えるような新発見はないが、これだけは言える