<1964年に巻き起こった「ビートルマニア」現象。未使用の素材はあまり残っていないはずだが、約17分の未公開映像を盛り込んだドキュメンタリーが、ディズニープラスで配信開始された>

ビートルズ旋風が吹き荒れた1960年代を描くなら、まずは耳をつんざくような10代の少女たちの歓声で始め、見る者を興奮の真っただ中に放り込むのが常道。だが11月29日にディズニープラスで配信が始まったデビッド・テデスキ監督の長編ドキュメンタリー『ビートルズ '64』は、逆に私たちを当時のアメリカ社会の現実に引き戻す。

『ビートルズ '64』ディズニープラスの予告編はこちら

冒頭に登場するのは、ビートルズの4人ではなく若きアメリカ大統領のジョン・F・ケネディ。月に行く夢を熱く語り、ダラスの飛行場に降り立ったかと思うと、画面は首都ワシントンでの重苦しい葬列に切り替わる。

この短い導入部の意味は、後にポール・マッカートニーの口を借りて明かされる。ケネディを失ったアメリカは僕らが来るのを待っていた。ポールはそんなふうに言う。実際、ケネディ暗殺から3カ月もたたない1964年2月、ビートルズは人気テレビ番組『エド・サリバン・ショー』に出演し、悲しみに沈む国民に歓喜の瞬間を、新聞には大見出しになる話題を提供した。

つまり、この作品はアメリカ国民の壮大なドラマであって、作中のビートルズはよくて脇役だ。そもそも「ビートルマニア」と呼ばれた現象が映像で記録されたのは60年も前のこと。未使用の素材はあまり残っていない。

もちろん本作にはポールとリンゴ・スターへの新たなインタビューに加え、往年のファンや音楽業界の大物の興味深い証言も含まれる。

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