また、こうした出版物は書物屋仲間内で一定の検閲を受けた上で、制作するのが通例であった。江戸の出版物の取り締まりについては、大岡越前守の立案に端を発し、1721(享保6)年に江戸の書物屋仲間が組織され、翌年には出版のルールを明記した出版条目を発令している。

この過程で、書物屋仲間内で仲間行事を立てて、重板・類版がないかどうか互いの利益を守るために検閲を行うようになった。これを写本改めと呼ぶ。その後、印刷・製本し再び検閲が行われ、こうした行事改(あらため)を通過したものが流通・販売される。

赤本から黄表紙まで、江戸の本模様

江戸時代には洒落本や人情本、滑稽本や読本など、さまざまな種類の本が生み出された。

特に蔦屋重三郎が活躍した安永・天明期に全盛を迎えた黄表紙は、草双紙と呼ばれるジャンルのうちのひとつである。また、草双紙は江戸の地本問屋が積極的に出版し、独自の発展を遂げた人気ジャンルであった。江戸の地本問屋の成長は、草双紙の発展とともにあったといっても過言ではない。もともと草双紙は、「花咲爺さん」や「桃太郎」「文福茶釜」などの童話を絵本化したものや浄瑠璃を素材にしたものが中心で、読者も子供を想定したものであった。丹に色いろの表紙であったため、赤本と呼ばれた。

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その後、演劇物や戦記、敵討物を中心的な題材とした草双紙が作られ、表紙が黒色であったことから黒本という。その後、流行した萌黄色の表紙の青本は、より当時の社会風俗を取り込んだ大人向きの絵入り読物となった。その後、鱗形屋孫兵衛の書店から恋川春町『金々先生栄花夢(きんきんせんせいえいがのゆめ)』が刊行されて以降、黄色の表紙の大人向け草双紙である黄表紙が大流行することとなる。

黄表紙は日光による褪色も早いことから、初めから安価な黄色い表紙を付けるなどの工夫が施されている。値段も1冊10文(約200円前後)と安価で、量販向きの書物であった。

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Pen BOOKS 蔦屋重三郎とその時代。

 ペン編集部[編]

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