髙梨さん 日本の協力はパラオの気候変動対策にどのように役立っていますか?

ウィップス大統領 パラオは2032年までに再エネ比率を100%にすることを目指しています。現在、JICAの協力で導入に向けた調査が進められている海洋温度差発電(OTEC)*は、クリーンで安定したエネルギー源であり、脱炭素化に役立つでしょう。OTECを進めている久米島(沖縄県)から学んだことは、電力だけではなく、海洋深層水を活用した産業の発展も望めるということです。ぜひそれをパラオで実現し、脱炭素化を世界に示したいと思っています。

テスト運行中の路線バスシステムも、人々の車依存を減らし、二酸化炭素の排出量を減らすために有効です。将来的には、電気(EV)バスや水素バスを使用するなど次のステージに進めたいですね。

*海洋温度差発電(OTEC)...表層海水と深層海水の温度差を利用する発電システム。沖縄県久米島で、発電の際に汲み上げた海洋深層水を飲料水や養殖業、農業に活用する実証事業が進められており、電気と共に産業も生み出す「久米島モデル」として注目を集めている。

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(左)大統領執務室で行われたインタビュー後、大統領から髙梨さんへ、パラオを紹介する書籍がプレゼントされた(右)太陽光蓄充電システムを搭載したEV自動車を観光に活用する「姫島モデル」も、パラオへの導入が検討されている。日本のスタートアップT-PLAN社が大分県姫島村で実施する取り組みで、2023年4月にはパラオで試乗会も実施された。写真は大統領の試乗の様子

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(左)車依存社会のパラオで、国民の主な移動手段は自家用車。JICAの協力による環境配慮型公共交通システムの整備に向け、現在路線バスがテスト運行中(右)路線バスに乗車した髙梨さん。私生活ではよくバスを利用するそう

自然の中で暮らす私たちがやるべきことは?

パラオのさまざまな場所で、気候変動対策に関わる人たちに話を聞いてきた髙梨さん。「至る所にJICAの協力があって驚きました」と話します。

「私自身、気候変動を深刻な問題と捉えていて、雪不足でスキージャンプの試合が中止になることや人工雪をジャンプ台に貼り付けて開催することも増えてきており、この現状に危機感を持っています。今回のパラオ訪問で、雪や山だけにフォーカスするのではなく、『世界をもっと広く見なければ』という意識を持ちました。海や山を含め、私たちの生活は自然に守られていると思います。その中で生活している以上、私たち一人ひとりが気候変動問題に取り組んでいく必要があると思いました」

髙梨沙羅髙梨 沙羅(たかなし・さら) スキージャンプ選手

1996年生まれ。小学2年生からジャンプを始め、2018年平昌冬季五輪で銅メダル獲得、国際スキー連盟(FIS)ワールドカップで男女通じて歴代最多の通算63勝をあげるなど世界で活躍を続けている。各国を転戦する中で、雪山への影響をはじめとする気候変動問題に危機感を持ち、2023年に「JUMP for The Earth PROJECT」を立ち上げ。自ら積極的に環境保護活動に取り組んでいる。

(関連リンク)
気候変動に対する強じん性を高める沿岸生態系の管理能力向上プロジェクト
パラオでのJICAの取り組み
パラオが導入に向け調査を進める「久米島モデル」とは
髙梨沙羅さんが取り組む「JUMP for The Earth PROJECT」

【動画で見る】髙梨沙羅さんと学ぶパラオの気候変動アクション