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ストの影響で救急患者の受け入れに支障が出るケースも JEAN CHUNGーBLOOMBERG/GETTY IMAGES

今の韓国にはそういう仕組みがなく、一方で悪しき出来高払いが温存されている。この事態に対処するため、尹政権はいわゆる「混合診療」(治療費に公的健康保険が適用される治療と、保険外の自費治療を同時に行う行為)の禁止を打ち出した。

健康保険が適用されるのは救命や生活の質の維持に必要な治療行為だ。ただし保険診療には報酬額の上限があるため、儲けたい医師は保険外の治療を好んで行う。当然、患者側の金銭的負担は増える。それを防ぐために、政府は混合診療の禁止を打ち出したが、医師たちはこれにも反対している。

医学部の定員増に反対する理由の1つとして、医師たちは少子高齢化に伴う将来的な人口減を挙げている。だが総人口は減っても、高齢者が増えれば医療のニーズは増えるはずだ。

韓国では50年までに65歳以上の高齢者が人口の40%を占め、72年までには50%近くに達する可能性が高い。短期で見ても、高齢化によって患者の平均入院期間は45%も長くなる。一方、35年までに3万人以上の医師が退職する見込みだ。

需要の増加は高齢者医療にとどまらない。病院側は最新の遺伝子工学や臨床研究、デジタルヘルスケア、バイオテクノロジーなどにも対応せねばならず、そうした新分野の研究や臨床応用に当たっての倫理基準の制定などに従事する医師の需要も増えている。

「命の診療科」が敬遠される現実...韓国医療の偏りと深刻な医師不足
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