惑星科学の研究者としては、「自分のやっている研究の延長線上にプラネタリーディフェンスがあるならば、そちらにも情報を与えていこう。それが地球防衛の発展につながれば嬉しい」という感覚なのではないかと思うのですが、一般の方があまりに「地球防衛」というワードに食いつきすぎて、言葉だけ独り歩きして、ちょっとおかしな方向に進んでいるということもあるのではないでしょうか。

藤本 伝え方を間違えると「オオカミ少年になるのではないか」という危惧はあります。「現在の科学的な情報に基づけば、地球に衝突する天体はやって来ないです」と言っても、一般の人は「絶対に来ないんだ」と全然違う意味で捉える可能性がありますよね。そこはすごく難しい話題だと思います。

一方で、天体衝突に関しては2029年4月13日、小惑星アポフィスが静止衛星よりも極めて近いところ(※筆者注:静止衛星は高度36000キロを飛行している。アポフィスは高度32000キロまで近づく見込み)を通るわけで、世界のほとんどの人が「地球防衛」を意識せざるを得ないイベントが起こるじゃないですか。なので、今から「地球防衛」と言っておいて準備を進めておかないと、4年後に急に言い出すのも何だかおかしい話になってしまうんですよね。

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円谷プロが手がけたJAXA「プラネタリーディフェンス」の応援ビジュアル(左)とウルトラマン像(4月6日、東京大学で開催された公開講演会「天体衝突から地球を守る」会場ロビーにて) 筆者撮影

 「理学的な宇宙科学研究」と「社会のための科学」の折り合いという面はいかがですか?

藤本 「社会の役に立て」と言われることは、それによって研究がつまらなくなるわけではありません。たとえば、「地球防衛」を考えさせられるくらい地球に近づいてきた小惑星があれば準備して観測すればいいので、それは宇宙工学として楽しい話なんです。

もっとも、「観測もせずに、ただ来た小惑星に探査機をぶつけて軌道を変えろ」と言われたら、あまり楽しくないかもしれませんね。「その手前の段階で、小惑星の状態を調べる必要がありますよね」と思います。

実用な科学としても、理学的にも楽しめる宇宙科学としても、ちょうどいい塩梅というのがあると思うんです。一般の方には「地球防衛」という面だけでなく、惑星というのは天体衝突が何度も起こって形成されるんだとか、そうやって水も得られたんだよっていうことにも興味を持ってもらえたらな、という淡い期待もあります。

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