9.11の衝撃と米中の即時対応

こうした緊張が高まっていた矢先の2001年9月11日、米国本土がテロの標的となった。ハイジャックされた旅客機が世界貿易センタービルに突入し、ペンタゴンも攻撃されたこの事件は、米国の安全保障観を根本から揺るがした。ブッシュ政権は直ちに「テロとの戦い」を宣言し、アルカイダやそれを匿うタリバン政権に対する攻撃を開始した。

中国の反応は迅速だった。江沢民国家主席(当時)は事件発生直後、ブッシュ大統領に哀悼の意を伝え、テロリズムを「人類の共通の敵」と位置づけた。中国は米国との協力姿勢を明確にし、情報共有やテロ対策の国際枠組みへの参加を約束した。これは、中国にとって国際社会での責任ある大国としてのイメージを高める機会でもあった。

一方、米国側も中国の協力を戦略的に評価した。中国は中央アジアやパキスタン地域に強い影響力を持ち、テロ組織の監視や情報収集で有用だったためだ。こうして、9.11は米中関係の再定義を促した。ブッシュ政権は中国を「競争相手」から「責任あるステークホルダー」へと位置づけ直し、テロ対策を優先した協力関係を構築した。

対テロ協力の深化と具体的な成果

9.11後の米中協力は、具体的な外交イベントで顕在化した。2001年10月の上海APEC首脳会議は、その象徴的な場となった。ブッシュ大統領と江沢民主席は、テロ対策を軸とした対話を進め、両国間の連携を強化することで合意した。この会議では、米中がテロリズムの脅威を共有し、共同で対処する姿勢が国際的にアピールされた。

また、米国は中国の主張する新疆ウイグル自治区の分離主義勢力、特に「東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)」を国際テロ組織に指定した。これは、中国の国内治安問題をテロ対策の文脈で認めたもので、両国間の信頼を高めた。

この協力は軍事・情報分野にも広がった。米国はアフガニスタンでのタリバン打倒作戦で、中国から間接的な支援を得た。中国は国連安保理でのテロ関連決議を支持し、テロ資金の凍結や情報交換の仕組みに参加した。

これにより、中国は国際社会での地位を向上させ、米国はアジア地域でのテロ対策を強化できた。結果として、米中関係は緊張緩和のムードが広がった。

新疆政策への波及効果
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