もっとも、AI気象予報モデルは良いことばかりではありません。

HRESは緯度経度0.1度(赤道で11.1キロ×11.1キロ)の高解像度で予報できるのに対して、GraphCastはいまのところ0.25度が限界です。さらに、AI気象予報モデルは「なぜそのような予報になったのか」の根拠が分からず、ブラックボックス状態です。

研究チームは、「AIを使った天気予報は、伝統的な気象予測技術を代替するものではなく、補完するものだ」と語っており、より活用しやすく、世界のさまざまな地域に最適化させるためにAIモデルをオープンソース化しています。

「豪雨の半日前予報」を目指して

日本は、12年から19年に運用されたスーパーコンピューター「京」を使って、水平方向の格子間隔870メートルで全球の大気のシミュレーションに世界で初めて成功するなど、気象モデルで世界をリードしています。けれど現在、気象庁で予報作業に利用している数値予報モデルは最も精細なものでも水平解像度は2キロで、この解像度では近年増加している線状降水帯の早期予報が難しく、苦戦しています。

研究者たちは解決のために、観測データを最初に与えるだけでなく、数値予報の計算途中でも最新データを与えてその都度、軌道修正する方法(データ同化)を実用化しつつあります。さらにAI気象予報モデルでの補完も加えれば、目標としている「豪雨の半日前予報」の実現が早まるかもしれません。

天気予報は古来、最も身近な科学の1つです。日々の天気は私たちの生活や経済活動を左右します。人々の命と財産を守るために、さらなる高精度の天気予報の実現に力を尽くしている研究者たちを応援したいですね。

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