<15%でディールに至ったが、手放しで褒められるものではない。日本では個人消費にブレーキがかかり低成長が続く一方、輸出企業の環境は厳しい。経済浮揚の焦点は、自民党の次期総裁が誰になるかだ>

トランプ米大統領は、日本に続いてEUとの関税交渉においても関税率を15%に引き下げて妥結した。日本の基幹産業である自動車の関税率も15%に引き下げた今回の決定は、筆者を含めた多くの市場参加者にとってサプライズである。

トランプ氏はいわゆるTACO、「Trump Always Chickens Out(トランプはいつも怖気づく)」との揶揄には不愉快だったようだが、4月初旬に掲げた高い関税率は概ね引き下げられ、結局はTACOであったということだ。

ディールを有利に運ぶための材料として高関税政策の脅しを使っていた、ということになる。日本や欧州が承諾した米国に対する大規模な投資へのコミットが、米国が獲得した成果の一つである。

とはいえ、米国への投資判断は民間企業によって行われるので、政府には、政府系金融機関による融資拡大など側面支援しかできない。この出資や融資が返済されなければ日本の損失(=米国への資金支援)になるリスクがある。

ただ、詳細は不明だが政府系金融機関の出資比率が抑制されていることを踏まえれば、大きな問題にならない融資規模にとどまり、自動車に25%の関税を課されるダメージのコストのほうが明らかに大きいと判断される。

また、自国への自傷政策でもある高関税政策を断行するリスクをベッセント財務長官らが理解しており、トランプ大統領は必ずしも教条的な高関税主義者ではなかったようだ。株式市場の上昇は続いている一方で、トランプ大統領の支持率が停滞し続けているため、「ディールによる成果」を獲得したい政治事情も妥協を急いだ大きな理由だろう。

トランプ政権が世界経済のリスクであることは変わらない
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